ニッケイ新聞 2008年5月10日付け
ミャンマ―(ビルマ)の大型サイクロンの惨状は酷い。死者が2万2千人、行方不明4万人の情報もあるが、アメリカの臨時大使は死亡10万人説を表明するなど混乱している。被災地には家屋倒壊と橋梁が落下し軒並みの浸水家屋が続く。犠牲者の多くは、4メ―トル近い高波に襲われ、食糧と飲料水の不足で悲鳴を上げている▼日本は台風大国で「二百十日」になると暴風と豪雨が吹き荒れ、崖崩れなどの被害が広がる。だが―「昭和の3大台風」の室戸・枕崎・伊勢湾でも、ミヤンマ―のような損害は出ていない。伊勢湾台風が最大だけれども、それでも死亡者は約4700人、不明が401人であってバングラデシュの14万人など東南アジアで猛威のサイクロンには到底及ばない▼尤も、ミャンマ―は軍事政権が長く、政治的な混迷も深い。アウンサン・ス―チ―女史の自宅監禁などに対する批判もあるし、今回の災害についても十分な防災対策をとっていたのかの疑問は残る。高潮と強風に痛めつけられた庶民らも「政府の救援がなっていない」と痛烈に非難し、食べる物もなく、住む家もないと嘆く。それでも、日本などからの支援物資が届いて恩恵に感謝の住民もいる▼この天変もだが、伊勢湾のときも記録的な高波が人々や家屋を襲い被害を大きくした。全壊家屋3600、浸水家屋は16000にも達したのも海からの高い波と洪水が大きな原因であった。この貴重な災害の体験に基づいて政府や自治体は治山治水の整備と防災訓練に取り組んできたが、開発途上国でもこうした面に力点を置いた政治と行政を展開して欲しい。 (遯)