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奴隷解放令施行から120年=今でも残る負の歴史遺産=社会と個人の意識変化必要

ニッケイ新聞 2008年5月14日付け

 帝政時代に皇女イザベウによって施行された奴隷解放令から百二十年。この黄金法施行記念の五月十三日、ルーラ政権では人種平等政策局設立五周年の記念切手を発行など、十二、十三日の伯字紙には黒人社会に関連した記事が出ている。
 例えば、十三日の伯字紙では、黒人やパルド(黒人と白人の混血者)の分布が奴隷時代の人口分布とほぼ同じとの報告や、人種差別撲滅への功労者表彰、大学受験特別枠の件が取り上げられている。
 黒人やパルドの分布については、今も港に近い地域に集中しており、バイア州は一三・〇%と六〇・一%。一方、サンパウロ州では四・四%と二二・八%、サンタカタリーナ州では二・七%と七・〇%など、地域差が大きい。全国平均では、黒人が六・二%、パルドが三八・五%となるという。
 一方、大手企業五百社の経営陣に入っている黒人やパルドは三・五%とは十二日付けフォーリャ紙。管理職一七%、現場の監督一七・四%、一般社員二五・一%など、黒人社会への門戸はまだ閉ざされているといえる。
 これは奴隷時代からの負の歴史遺産といえるが、これが経営陣に加わっている黒人女性となると、二重の偏見が重なり、その比率は〇・五%以下という。
 こうした中、第一線で活躍している人々が口にするのは、人一倍努力し、実力をつけること。劣等感を拭い去り、意識改革をすることも必要だと言う。
 複数の専門家が指摘する黒人社会の問題の一つは教育環境だが、私立校への就学率が低い黒人やパルドが大学進学を願う場合、特別枠の存在は大きい。私立大生への政府奨学金支給により特別枠の利用者は減少気味ともいうが、白人以上の努力を強いられる黒人やパルドの重役層が人口比率並みになった時、黒人への偏見が消え、人種差別が終わったと言えるのかもしれない。