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デカセギ哀話=「帰伯しないと子供殺す」=妻がネット越しに脅迫?

ニッケイ新聞 2008年5月17日付け

 日本で働く夫とインターネットで会話した後、神経質になったブラジル人妻が自分の子供(四歳)にナイフを突きつけて人質に取り、三時間余り自宅に立てこもり、警察に説得されるという事件が、十五日朝、パラナ州クリチーバ市郊外のリオ・ブランコ・ド・スルで起きた。
 十六日付けパラナ・オンライン(以下POサイト)によれば、妻マルシア・ファリア・センキは市立学校の教師。夫は日系三世で、八カ月前に日本就労に旅立った。同記事によれば、妻の友人は「彼らは一緒になって五年。彼女は夫の不在をとても淋しがっていた」という。妻は夫婦の実子である末っ子を連れて、一年間日本で過ごす予定だった。上の二人(九歳、十一歳)は以前の配偶者との子供。
 妻は十二日に、ビザを申請していたクリチーバ総領事館で面接を受けたが、十五日に「不許可」の連絡があった。
 同記事によれば、妻は夫が不義をはたらいているとの疑いを持っていたらしく、末っ子が泣くたびに父親の写真を見せてなだめるのに疲れていた。ビザが不許可になったことを受け、夫にすぐに帰伯することを求めてインターネットで会話(ウエブカム)していたが、同意を得られなかったため、コンピューターに向かって大声で叫び、思いあまって末っ子にナイフをあてて夫に決断を迫ったもの、と見られる。
 POサイトにはそれを聞きつけた隣人が警察に通報したのではとしているが、ベン・パラナ・サイトでは「一部始終をインターネット越しに見ていた夫が(日本から現地の)警察に連絡した」となっている。
 POサイト記事には「彼女は一日中仕事をし、三人の子供の世話をし、病気を患う実母と夫の母親の世話までしており、これほど真面目なのに、かの国のビザは得られなかった」とあてつけるように書いている。
 午前九時半頃に特別オペレーション部隊(COE)が駆け付け、窓越しに会話をし、三時間後になんとかなだめ、病院にいくことを受け入れさせた。家の中に入ると、彼女が座っていたソファーのクッションの下に調理用包丁が隠してあったという。
 午前十一時頃、妻は救急車に乗せられ、病院へ運ばれた。子供たちは親戚や教育責任者の訪問を受け、昼頃には何事もなかったかのように、ビデオゲームをして遊んでいたという。