ニッケイ新聞 2008年5月28日付け
中央銀行は二十六日、一月から四月までの経常収支が累計で百四十一億ドルの赤字と発表したことを二十七日付けエスタード紙が報じた。中銀が、予測した年間百二十億ドルを遥かに上回る最悪の結果だ。原因はレアル高による輸出の激減と多国籍企業の配当送金のためという。しかし、大量流入の直接投資もあり国庫の決済に支障はないとしている。
花見酒経済が、始まったらしい。四月の経常収支は、三十三億一千万ドルの赤字であった。しかし、外資の直接投資という歳入があるから心配ないと中銀は構えている。かつて決済のために金策に走った時代とは、雲泥の差だというのだ。
四月の流入外資は、三十八億七千二百万ドル。税関職員のストが終了したので、六月から輸出はまた拍車がかかると中銀は見ている。経常収支の赤字増加率も、いつも同一リズムではない。国際市場の動向がものをいう。五月に入ると、貿易収支は十八日で二十二億ドルの黒字となった。
貿易収支は五月第四週で七百五十四億ドル、昨年同期比で五三・七六%の落ち込み。急激な落ち込みに関係者は、黄信号を点している。輸出の激減で為替政策不在を訴えるが、為替歪の原因は貯蓄と投資の不均衡にあるという見方がある。
中銀の楽観説は、不確定時代の政策として国民を不安にさせる。税関ストや輸出回廊の問題は、輸入よりも輸出に支障を来たす。輸入は昨年同期比で四三・六%伸びたのに、輸出は一三・六%に留まっている。
コモディティの需要は、昨年から後退気味。為替は、相変わらずレアル高。しかし、流入外資のお陰で心配無用というが、国民は納得しない。流入外資は、経済成長を前提として期待されるもの。
同時期に配当金の送金が昨年同期比で一二一・三%増の百二十三億五千八百万ドルを海外へ持ち出した。これは、何を意味するのか。災厄前夜、ネズミは一斉に圏外へ移動するらしい。
中銀発表は大本営発表のようなもので、中銀総裁がいうほど信用できるものではなさそうだとエスタード紙が警告した。ブラジルの貿易政策は、見直したほうがよい。輸入抑制ではなく、冷え込んだ国際市場へのブラジル製品売り込みをだ。