ニッケイ新聞 2008年5月29日付け
「東洋街は内側からエスニック色が薄まってきてしまっているように感じる」。ブラジル人写真家マルシオ・スカヴォネさんがそう残念がっているコメントが伯字紙に掲載され、感慨深いものがあった。彼は二十八日からサンパウロ市のムゼウ・デ・カーザ・ブラジレイラで、東洋街を百日間歩き回って撮った写真展「リベルダーデへの旅=日本人の魂を探して」を開催している▼連日、ブラジル社会側からの百周年祝賀イベントが行われている。日系人が自分でやるのより、よほど大規模なものをしっかりと計画して実行していたりして驚く。日系人はこんなにもブラジル社会から愛され、慈しまれていたのかとじみじみ感じる▼そこに共通して見えるのは、ブラジル人が日系人に求めているのは「伝統的な日本」を忘れないで欲しいというメッセージだ▼先日、日本のロックスター「雅」のショーを文協大講堂で見たが、ここに来ていたのは非日系若者ばかりだった。二十六歳の日本人男性歌手を「あの歌手はキレイ、歌もいい、しかもジャポネースだ」と口々に讃美するのに驚いた▼彼の音楽は「ジャパニーズ・カブキ・ロック」(日本風歌舞伎ロック)という特色があり、三味線風のギター奏法、和太鼓、歌舞伎調を取り入れた衣装、女装した美青年というというスタイルが、世界中の若者の心をとらえて離さない▼グローバリゼーションの現在、ジャポネースであることの価値は確実に上がっている。今ほど日本文化、日系性を残すことに社会的な合意のある時代はない。百周年を機に、そのような期待に添える日系人が育ってくれることに期待したい。(深)