ニッケイ新聞 2008年5月30日付け
二十九日付けエスタード紙とフォーリャ紙に人権問題に関連のある記事が平行して掲載された。
エスタード紙は、国際赤十字が、リオ市のファヴェーラでの麻薬密売者と警官隊との抗争は戦争状態だとし、六月後半から最低三十人の救助ボランティアを送ると発表したことを報道。フォーリャ紙は、二十八日に提出された国連人権委員会(以下、人権委)報告書で、ブラジル関連として、(一)警官による暴力、(二)非効率的な司法制度、(三)土地なし農民や先住民に対する暴力や脅迫、(四)奴隷労働、(五)刑務所問題などを指摘と報じている。
国際赤十字の発表は人権委報告第一項とも関連するが、二十八日も、リオ市では三カ所で麻薬密売者と警官隊との攻防があり、七人が死亡、民間人一人が負傷。昨年一年間に軍警が殺害した人数は千三百三十人で一昨年比二五・一一%増加。今年一、 二月の死者も二百十八人で、昨年同期(二百七人)比五・三一%増加。カブラ ル知事政権下では月平均百十人が死んでいる計算になる。
赤十字社は通常、戦場での民間人や軍人の救助、その他、緊急事態発生時の救命、救出作業を行っているが、市街地での銃器を用いた抗争での救助活動は新しい取組み。二十七日にジュネーブで発表された内容では、ブラジル赤十字社は、リオでの救助活動の他、留置所や刑務所での虐待などに対する支援活動も行う予定とされる。
この刑務所関係の問題は人権委報告書第五項でも触れているが、昨年十一月に起きたパラー州の少女が男性と同じ房に収監され、暴行された例が挙げられているという。
また、人権委報告書第三項ではロライマ州の先住民保護区での米作農家と先住民の衝突に言及。
第四項関連では、昨年三月にサンパウロ州内六つのさとうきび畑の労働者二百八十八人が奴隷労働として保護された例を報告というが、さとうきび畑労働者が取り上げられたのは初めて。ブラジル政府は、奴隷労働への国内監視は強化されており、昨年は五千九百九十九人を救出、今年も既に千十九人を救出したとしている。