ニッケイ新聞 2008年6月3日付け
イタリアを歴訪中のルーラ大統領は一日、ブラジルのエタノール生産へ国際的な封鎖作戦が展開されていることで、その対応は「売られた喧嘩」と位置付けたことを二日付けエスタード紙が報じた。これらの作為的な謀略に対し、これからは世界貿易機関(WTO)を戦場として争うことになると大統領は宣言した。
EUを始めとするグループが、温暖化防止という美名のもとにエタノール封鎖作戦を展開していることで、その欺瞞性をルーラ大統領が糾弾した。ブラジルの森林伐採を批判するなら、その前にEUの乱伐による伐採の実体を見てからものを言えと訴えた。
大統領の対応は、宣戦布告の通告といえそうだ。EUの唆しで始まった国際的な動きが、ブラジルを標的としているのは明白。「喧嘩なら受けて立つ」と大統領はたんかを切った。EUの作為が、WTOに向け、外堀を埋める魂胆であることは想像に難くない。
大統領は記者団に述べた。「ブラジルは今、数々の主要産品輸出国だ。国際舞台の主役で余りに目立ち過ぎたから、世界が足を引っ張っている。ブラジルは、G8洞爺湖サミットへ招待されたが、サミットの残飯を食わせるのなら断る。ブラジルは、お人よしの協力者ではない」と。
サミットは主要議題を協議し終える最終日に、ルーラ大統領を招いた。大統領は「サミット宣言が、ブラジル代表を交えての合意のような言い方をされるのは迷惑。G8サミットは、途上国の分際を守るならという前提付きの会合だ。洞爺湖サミットでは、ブラジル代表でなく途上国代表として地球温暖化やエタノールとは何かを訴える」という。
大統領は三日、国連食糧農業機関(FAO)会議で食糧高騰とエタノール元凶説に関する演説を行う。これまで異常気象の石油元凶説はいうが、それへの対応として、エタノールが最善の貢献策であることを誰も口を閉じていわなかった。
森林伐採といえば、ブラジルだけのように吹聴する。EUに現在残っている自然林は、〇・三%である。この乱伐振りを、どう説明するか。アマゾンはブラジルの領土である。アマゾンを保護したければ、相応の協力をすべきだ。これまで余計な口出しをする者はゴマンといたが、カネを出した者は僅少であった。