ニッケイ新聞 2008年6月3日付け
二百年前にブラジル初の新聞が創刊された記念日すべき六月一日付け伯字紙に、リオ市のファベーラで取材中のジャーナリストらが拉致され、暴行を受けたと報じられた。
一日、二日付けの伯字紙によれば、五月一日からリオ市西部のファベーラ、バタンに住み込み、武装集団にコントロールされている地域社会の実態を取材中だった地方紙「オ・ディア」の記者ら三人は、十四日に拉致され、七時間余り監禁された上、殴る、蹴るなどの暴行を受けた。
最初に拉致されたのは写真家と運転手で、ビールを飲もうと誘われて店についたところで、武装した男たち十人に囲まれた。借家にいた記者も七人の男たちに拉致され、一カ所に集められた。七時間余りの監禁中、三人は二十人近い集団から暴行を受けたという。
監禁中、三人のEメールで記事や写真を見た一味は、さらに暴行を加えたというが、写真には、警察車両や、武器を持ってファベーラ内を自由に歩き回る男たちの様子も写っていた。三人は殺すぞとの脅しも受けたが、その後、携帯電話や金銭略奪の上、この件について口外しないことを条件に解放された。
リオ市内七十八のファベーラを管理しているといわれる武装集団は、基本的には、警官や消防士、犯罪人らが組織。麻薬密売者らを地域から追い出し、地域の安全を約束する代わりに、住民や商人たちから金を徴収。ガスなどの販売を一手に握り、利益を得る他、泥棒や麻薬使用者の取り締まりや処罰も実行する。
今回の事件の発表が遅れたのは、警察の調査を妨害しないためだったというが、二日の記事によれば、警官らの関与は明らかで、監禁されていたと見られる場所からは銃器も応酬されたが、現時点では証拠不十分で、一斉検挙には早いという。
この事件の報告を受けたリオ州知事は徹底捜査を命令。報道関係諸機関は、報道の自由と権利、国民の知る権利への侵害であるとし、組織の一掃をとの要望を提出した。
国連や国際的人権擁護組織などでは、麻薬密売者との抗争や警官による暴行が問題視されているブラジルだが、国内外からの治安政策を問う声がさらに高まりそうな事件がまた一つ起きたといえる。