ニッケイ新聞 2008年6月10日付け
五月三十一日の世界禁煙デー~六月六日を禁煙週間とする国もあるが、七日エスタード紙が、複流煙の実態を報じた。
複流煙とは、煙草から立ち上る煙のこと。喫煙者が直接吸い込む主流煙や喫煙者から吐き出される呼出煙に比べて有害物質の量が多く、周りに喫煙者がいれば、皆が影響を受ける。エスタード紙の記事では、五歳までの児童の二四%からニコチンを検出。成人許容量の二百倍のニコチン検出という例もあるという。
以前の調査では、私立校生徒の五一%が間接的喫煙者とのデータがあるともいうが、今回、三人の喫煙者がいる家庭の三歳男児から二七二・六ミリグラム/mlのニコチン検出という数字は、ニコチンの中毒量は一~四ミリグラム、致死量三〇~六〇ミリグラム、タバコ一本の喫煙によって吸収するニコチン量三~四ミリグラムという数字と比べ、驚くべきもの。
三十一日エスタード紙によれば、世界保健機構は、青年層への刺激を減らし、喫煙開始年齢を遅らせるため、禁煙デーに先立ち、世界各国に全面的な煙草広告禁止を呼びかけたという。また、同時に、二十八日伯字紙が報じた煙草の外箱印刷用の警告写真を世界的に適用するよう呼びかけてもいる。写真は、喫煙によって起きる心筋梗塞や流産、血流障害、皮膚の老化などを知らせる啓蒙用で、灰皿の中の胎児といったショッキングなものもある。
一方、一日フォーリャ紙によれば、煙草産業のターゲットは青年や女性。広告禁止などで、国内の喫煙者は減少中だが、それでも、喫煙者の七五%は十五歳以下で喫煙開始。公立校生徒の一〇・四%は煙草を手放せないとのデータもある。
煙草中毒の主原因は、煙草によって分泌される神経伝達物質ド―パミンが引き起こす快感。これは酒好きの人が飲んだ時や、デザートを口に入れた瞬間の快感と同じ種類のものだが、本人が味わう快感を禁ずる権利はなくとも、妊婦の喫煙が流産や早死産、先天異常や、新生児死亡につながる危険度が高いことや、肺炎や喘息などの呼吸器系疾患の要因となる複流煙の恐ろしさには目を向けて欲しいもの。
また、喫煙はよくないと知りながら喫煙を繰り返す親に対して反発や批判をし始める子どもや、逆に両親が吸っているなら喫煙はよいものと考えるようになる子どももいるとの声に耳を傾ける必要もあるといえよう。