ニッケイ新聞 2008年6月11日付け
日本人、日系人は詐欺に遭いやすいというが、新聞広告を使った新手の詐欺の被害が全国に広がっていると十日付けエスタード紙が報じた。
詐欺の手口は共通しており、地域でよく読まれている新聞に外車や農業機械を破格値で売るとの広告が出る。連絡先は他州の局番の携帯のみで、興味を持った人が連絡を取ると、免税処置が受けられるため、三〇~五〇%の割引が可能と説明。交渉がまとまってくると、割引を受けるためには現金一括払いで本人持参が条件と切り出す。
バイヤーとのやり取りは携帯のみで、金の受け渡し時には空港まで迎えに行くと約束するなど、至れり尽せりなのだが、顧客と会った途端、バイヤーは誘拐犯に豹変する。持参した現金に加え、家族に身代金を請求。指定した他州の銀行口座に金が振り込まれたら顧客解放という手順。
しかし、写真のゴイアス州男性(74)は、十四万レアルの車を割引付で購入する話をまとめ、サンパウロまで来てバイヤーと会ったものの、四時間後に家族にかけた電話では、取り乱した様子で、「相手が小切手は受け付けないと言っている。何とか現金を工面してくれ。でなければ、俺の棺おけのふたが閉められることになる」と。絶望状態に置かれた家族が金額交渉し、ようやくかき集めた金を送金したが、六〇日たった今も何の消息もないという。
サンパウロ市市警では、このケースは都市第一コマンド(PCC)がらみのグループの仕業とみているが、三~四月にかけ、ゴイアス州男性を含む五件の届出があり、警官二人の殺害も起きている他、未遂例も一件報告されているという。また、犯人が指定した口座の中には、日に六五万レアルの金が動いた口座もあり、関連した口座の洗い出しがされている。
サンパウロ州以外にも、パラナ、サンタカタリーナ、バイア、ミナスの各州でも同様の報告があり、警察は、破格値の広告は疑うこと、現品受取り前の現金払いは拒否すること、領収証の発行を求め、固定電話やフルネームを聞き出すこと、他の顧客とも連絡をとってみること、個人で出向かないことなどを呼びかけている。