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サンパウロ州教育局=帰伯子弟対策に乗り出す=再適応の取り組み開始=三井物産とISEC連携

ニッケイ新聞 2008年6月12日付け

 サンパウロ州教育局で十一日午前、デカセギ帰国子弟向けの特別プロジェクトを開始するにあたり、事業パートナーとなる教育文化連帯協会(ISEC)と三井物産との調印式を行った。マリア・ヘレナ・ギマランエス・デ・カストロ局長は「州への日系人の功績は大きく繋がりは深い」との認識から、昨年から始めた日本文化教育プログラム「VIVA・JAPAO」に続き、今回はデカセギ帰伯子弟再適応プロジェクトを打ち出した。全日系人口の七割を抱えるサンパウロ州だけあって、百周年への取り組みには力が入っている。
 調印式で吉岡黎明ISEC会長は「日本にいった子供は適応に苦しみ、やっと慣れたと思ったらブラジルに戻ってまた大変な思いをする。どちらの社会でも受け入れ体制整備が必要であり、今回のは先駆的取り組みだ」と位置づけた。
 今年二月に設立されたブラジル三井物産基金から、このプロジェクトに十四万レアルを寄付した中山立夫同社長は「これが一つの呼び水となり、こうした社会的課題に対する取り組みの輪が他の企業や個人にも大きく広がっていくことを期待いたします」とのべた。これが同基金から助成第一号となる。
 三井物産本社でも〇五年から在日ブラジル人学校への支援を始めており、両側からの包括的な取り組みとして注目されている。
 在聖総領事館の丸橋次郎首席領事に続き、ヘレナ局長は「国民であれ移民子弟であれ、全ての子供に識字教育は必須。日本語でもポ語でも、社会性を身につける機会を与えなくてはいけない」との認識をあらわした。
 最後に、教育局合唱団約二十人が「大きな栗の木の下で」などを日本語で輪唱した。
 初年度デカセギ帰伯子弟再適応プロジェクトの総予算は十九万七千レアルで、ブラジル三井物産基金負担分以外はサンパウロ州政府が負担する。
 ISECは、帰伯子弟は全伯で毎年四千~五千人いると概算しており、うちサンパウロ州では三千~四千人を受け入れていると思われる。その大半は公立学校に入り、ポ語での授業についていけないなどの困難を抱えている。
 同教育局でVIVA・JAPAOコーディネーターをする日野寛幸さんは「まずは全州立校で調査をし、どの地域にどの程度いるのか把握する。そのあと具体策を進める」という。「欧米からの帰国子弟、ボンレチーロ区のボリビア人子弟の受け入れなども課題であり、これは模範になる」と語った。