ニッケイ新聞 2008年6月17日付け
オリンピック候補地のリオ市で、軍人に連行された青年たちを遺体で発見という事件が起きた。
十六日伯字紙によると、十四日未明に不敬罪で捕まり、取調べを受けた青年三人が、無罪とされた後に消息を絶ち、十五日にごみ捨て場で発見された。
殺された青年の一人の母親は、息子逮捕の知らせに兵営まで行ったが、離れた所から見かけた息子が最後の姿となった。「警察に連れて行くから」と言われて先に帰宅したが、なかなか帰ってこない息子が気になり、息子の携帯に電話。何度目かに出た男性から「兵隊たちはおまえの息子と友達をミネイラの密売人たちに売り飛ばしたぞ」と教えられた。
男性が口にしたミネイラ(の丘)というのは、青年たちの住むプロヴィデンシアの丘(ファヴェーラの一つ)を統治する麻薬犯罪組織と抗争関係にある組織が取り仕切っている地域。
市警の捜査で容疑者として挙がった軍人は、将校一人、軍曹三人、兵士七人。皆、家屋改修工事を目的としたプロジェクトに参加するため、昨年十二月からプロヴィデンシアの丘に駐留している部隊に属するが、十四日に青年たちが行方不明となって以来、住民らは態度を硬化。
約三十人が十四日にバス一台を焼き討ちし、九台を略奪した他、十五日に遺体が発見され、身元確認がされた後は、百五十人ほどの住民が兵営に詰め掛けた。軍人たちとの流血を伴う衝突こそ避けられたが、軍人たちと住民たちの間の空気は過去最悪となっている。
三日既報のジャーナリスト襲撃事件や、サンパウロ市での軍警大佐の射殺事件、各地での大量殺人事件に警察官が絡んでいたりと、権力と武器を持つ人々の犯罪続発を懸念している最中に起きた軍人の民間人売渡し事件。
リオでは麻薬密売者と警察との抗争死者記録更新中との報や、政治家の汚職事件、十五日エスタード紙の、病院の入院患者の二割は事故や暴行の被害者との報など、武器や権力を手にすると人は心を失い易いのだろうか。心無い人たちの行為が、国のイメージをまた壊してしまいそうだ。