ニッケイ新聞 2008年6月17日付け
ブラジル移民サスペンスの最高峰の一つといわれる麻野涼著『天皇の船』(文藝春秋刊)が待望の文庫化され、『移民の譜(ふ) 東京・サンパウロ殺人交点』(徳間文庫、九百六十円)として六日に日本で発売された。
「戦後移民史の闇を描く超弩級サスペンス」などとも物々しい書評が並べられた二〇〇〇年の話題作で、著者は元パウリスタ新聞記者としてコロニアを取材した経験のある麻野涼氏。
終戦後の勝ち負け抗争を舞台背景に、ある移民一家の心中事件、ご真影とともに飾れていた謎の写真、日本とブラジルで別々に起きたにも関わらずなぜか共に旧円紙幣を握りしめていた死体…などの謎がちりばめられる。
小説の終幕では、壮大なスケールで戦後の闇をえぐる展開をみせる。読み応えのある六百二十一頁。