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米国に距離を置く=強大国のエゴに騙されない

ニッケイ新聞 2008年6月19日付け

 ブラジルの外交努力は、米州機構(OAS)に軍事行動を戒め、また米国のコロンビアへの軍事支援を阻止したとブラジル版ル・モンド・ディプロマティック六月号が報じた。ブラジルが三月のOAS会合で、米国がテロ対策を聖戦の旗印とし、国際法を無視する独善的外交を南米の同盟国へ持ち込まないよう要求したことをさしたもの。
 ブラジルの見解は、Farc(コロンビア解放前線)をテロのリストに加えない国連の方針に準じるという。コロンビア政府と米国との共同プロジェクトは葬られ、コロンビアと米国をOASから村八分にした。
 OASにおけるブラジルの働きは何の得もないが、ルーラ大統領は独自性を強め、まだ頼りないが調停役として男を上げた。ブラジル歴代の大統領では、珍しい存在である。リーダーとしての実力は未知数だが、米国が一目置いている。
 コロンビアのエクアドル侵犯が、ブラジルと米国に距離を置かせた。ルーラ大統領に伯米友好関係を築く姿勢はなく、「平和と安定」を掲げて、途上国連合に新たな頭角を現そうとしている。
 米国が構想した安全保障と南米統合計画にヒビが入った。ブラジルにとっても、同じことがいえる。南米の地域紛争に米国が介在すると、二極化を引き起こす。ブラジルは、丸く治める。
 紛争地帯に国際習慣の非武装地帯を設けることは南米に限り、ブラジルが賛同しない。米国は介入する口実をつくり、その場はうまく収拾するが、協定は後で反故にするのが特徴。マルヴィナス(フォークランド)が、そのよい例。
 協定が反故にされないため、米国を含まない南米安全保障理事会の設立構想があった。さらにEUに倣った南米共同体構想でジョビン国防相が根回しに各国を歩いて打診した。しかし、三月一日に表面化したベネズエラとコロンビアの確執のため実現しなかった。
 「小さな構想は、自ら大国に隷属することになる。小さな国民は、隷属しないと何もできない。大きな構想を打ち上げるには、傲慢無知でもよい。小さな問題を乗り越えるために、策略と大胆を武器に地域のイザコザを達観しよう」とはジョビン国防相のことば。