ニッケイ新聞 2008年6月19日付け
【ブラジリア発】「多くの日系人が各界で確固たる地位を築いていることを大変頼もしく思います」―。首都ブラジリアの大統領官邸で十八日午前十一時、百周年・日伯交流年式典が開催され、皇太子さまは終始にこやかな表情でのぞまれ、そうのべられた。ルーラ大統領は「日本移民はブラジルの発展に大きな貢献をした。百周年はすべての面での二国間の交流を深める機会だ」と強調し、百年目の節目を祝った。全伯から約六百人が招待され、記念切手が発行されると同時に、移民史上初めて百五十人もの日伯友好に貢献した関係者に、大統領から勲章メダルが授与された。
儀仗兵が官邸前のハンパ(坂)に並び、厳かに祝砲が響く中、十七日晩に来伯されたばかりの皇太子さまは、大統領夫妻と並んで両国国歌の吹奏をきき、式典会場に入場された。
最初に中央銀行による百周年記念硬貨発行を記念して、実物が大統領、皇太子さま、キナリア連邦下院議長に渡された。続いて、エリオ・コスタ通信大臣がアドリアナ・シバタ氏デザインの記念切手に最初のスタンプを捺し、同様に渡す儀式をおこない、ランサメントとした。
続いて、日伯交流やコムニダーデの発展に顕著な貢献のあった百五十人に、大竹富江さんがデザインした渦巻きをモチーフにした勲章メダルが手渡された。
ルーラ大統領は「日系人はブラジル建国に尽くし、日本との架け橋になった」と高く評価、「バイオ燃料や先端技術分野などさらに広く親交を深めていきたい」と語った。「ブラジルは多人種、多文化の国であり、リベルダーデの姿をみれば、まさにそれが実現されていることがわかる。日系、非日系を問わず、この祝典は注目を浴びるに値する」と強調した。
最後に、皇太子さまは八二年の初訪伯時にフィゲレード大統領や日系社会から受けた温かい歓迎をはっきりおぼえているとのべ、「記念硬貨、切手や功労者の表彰はブラジル社会のご厚意を象徴するもの」と感謝された。「日伯交流年・移民百周年の機会に行われる行事が両国関係の強化につながることを期待しています」と語られ、四十分程度で終了した。
式典後、勲章を受けたサントス日本人会の遠藤浩会長(74、福島県)は「とても緊張した」と語り、皇太子さまが二十一日にサントスを訪問される予定にふれ、「歴史に残ること」と喜んだ。自身も受け取った、事情に詳しい二宮正人氏によれば、大統領からこれだけ大量に日系社会関係者に勲章が授与されるのは「初めてですよ」という。
サンパウロ援護協会の森口イナシオ会長(73、二世)は「これは援協がもらったもの。今までの奉仕活動を認めて頂いたことはありがたい」と微笑んだ。クリチーバ日伯文化援護協会の山脇譲二会長(66、二世)も「思いがけない光栄なこと。もっとがんばらなきゃという気持ちで一杯です」と握り拳に力をこめた。
十一人の慶祝国会議員の団長として来伯した麻生太郎元外相も「国会会期中にも関わらず、十一人も来れたのは、皇太子殿下がおいでになったから。こんな事は、次は二百周年だね」と日本側の意気込みを伝えた。