ニッケイ新聞 2008年6月21日付け
政府は十九日、食糧高騰がもたらすインフレ対策で次期作付けのため六百五十億レアルの農業融資を用意する意向と二十日付けフォーリャ紙が報じた。ステファネス農相によれば、同融資で来年度穀類生産は五%増の一億四千八百万トンが見込まれるという。
農相は、生産物がないのにインフレ抑制のため物価凍結をしたり、輸出制限や輸出品目への増税は、混乱を招くだけだ。さらに凍結で傷ついた生産者が、原状を回復するのに数年がかかる。
政府は経済指標の目標達成のためインフレ抑制は、必須条件としている。財政黒字はGDP(国内総生産)の三・八%からプラス〇・五%の四・三%に引き上げ、目標の百四十二億レアルを債務削減に充当する。
マンテガ財務相は、インフレが外的要因によるもので一時的現象だという。政府ができることは、経費削減である。財政黒字の確保は、国債の金利支払いのための資金調達である。
基本金利の引き上げや財政黒字の増額、融資税の増税などは経済活動の歯止めだが、インフレ抑制に役立っているという。いっぽう、クレジット抑制は考えていないし、経済成長率は五%を見込んでいる。
ルーラ大統領は、インフレ抑制のためにメキシコやアルゼンチンの轍を踏まないと声明を発表した。メキシコ政府は、産業界了解のもとに百五十品目の生活必需品に対し十二月まで物価凍結を行った。隣国は、輸出を国内消費に向けるため輸出増税を行った。
緩やかなインフレは市場を刺激し、資金の流通を活発にし、雇用も創出する。インフレは生殺の剣。市場はインフレで少し暖めないと、消費は伸びない。月間インフレが〇・五%から一%の間なら、市場には豊富な資金が出回る。すぐに対策の結果は出ないものだとルッピ労相が述べた。
ブラジルはハイパー・インフレの実験場であったのか、数々の苦い経験があり同じ失敗を繰り返したくない。ブラジルでは物価凍結が失敗の上、後遺症を残した。それが癒えるのに長い時間を要したと大統領が語った。