ニッケイ新聞 2008年6月21日付け
皇太子さま、いらっしゃいませ――。十九日午前、リベルダーデにあるブラジル日本文化福祉協会を皇太子さまがご訪問された。集まった観衆に手をお振りになり、大ホールで出迎えた高齢者らに優しくご挨拶されるなど、相変わらずのシンパチコぶりを発揮され、コロニアに大きな感動を与えた。ブラジル日本移民史料館九階では、史料館のアーカイブ計画に対する天皇皇后両陛下からのご下賜金を上原幸啓会長に渡された。七階の大武和三郎の常設コーナーにも足を運ばれ、二十六年ぶりの文協ビルに終始笑顔でのご滞在となった。沿道は皇太子さまのご訪問を喜ぶ観衆で埋め尽くされ、リベルダーデは慶祝モード一色となった。
午前十時十五分、皇太子さまがお着きになると街道を埋めた観衆が日伯両国旗の小旗を振って歓迎、皇太子さまは詰め掛けた人たちときさくに握手されながら、ゆっくりと歩を進められた。
文協記念講堂大サロンでは、日系団体の代表者が出迎えた。皇太子さまは、最前列に座っていた百歳の女性二人、五人の白寿者と一人一人丁寧に握手をされ、笑顔で話し掛けられた。
「手を握って頂き嬉しい。神々しかった」と花城淑子さん(100、愛媛)。感無量の表情を見せた。
「お出で頂き、有難うございます」と椅子から立ち上がって挨拶した日野重雄さん(99、愛媛)は、「ブラジルに来たからこそお会いできた」と興奮さめやらぬ様子で話した。
皇太子さまは、栗原猛史料館運営委員長の案内で文協七階のブラジル日本移民史料館をご訪問。 今年三月に常設された『大武和三郎コーナー』をご覧になった。最初の葡和辞典編纂者である大武に関する説明に「ポルトガル語に随分熱心な方だったのですね」と興味深そうに頷かれていた。 大武氏の孫和夫氏(55、東京在住)も立ち会い「大感激です」と感動の面持ちを見せていた。
九階まで階段で上がられた皇太子さまは、展示品を順番にご覧になり、日系力士で初めて十両に昇進した池森ルイス剛氏(元隆涛・三世)の化粧回しの展示に関心を示されていた。
東郷青児作の絵画の前で、西林万寿夫在ンパウロ総領事が同史料館の進める史料アーカイプ・プロジェクトについて説明。皇太子さまは天皇皇后両陛下からの御下賜金を上原幸啓百周年協会理事長に渡された。
お戻りになるのを待っていた観衆からは、「皇太子殿下万歳! ヴィヴァ! サウーデ!」との合唱が起こり、皇太子さまはさわやかな笑顔で手を上げられた。
文協創立会員で評議員の原沢和夫さんは「一時は文協に来られないかと残念に思っていたが、やはりお出でくださった。感動の一言です」と口を一文字に結んだ。
リベルダーデも歓迎の渦に
サンジョアキン街の角からリベルダーデ広場までの沿道は、日本とブラジルの小旗を持った多くの市民で埋まった。
鳥居のある大阪橋では「歓迎 皇太子殿下」の横断幕を手にした老人クラブ連合会の皆さんの姿もあった。
皇太子さまのお車はゆっくりとガルボン・ブエノ街を通過。皇太子さまは後部右側の座席から窓ガラス越しに手を振られ、沿道からは大きな歓声が上がっていた。