ニッケイ新聞 2008年6月24日付け
自然の酵素を活用した繊維エタノール精製所を米国のヴェレニアム社が六月一日に落成したことで、米国はブラジルのさとうきびエタノールに水をあけたと二十三日付けエスタード紙が報じた。
ブラジルでも、生物学者は温暖化現象が騒がれてない二十年前、まだアルコールが海とも山ともつかないころから持続可能なエネルギーに取り組んでいた。それは、繊維を分解し、バイオ燃料を産出する微生物または酵素の探索であった。
長くて固い繊維を砕いて微分化する消化力の強い酵素探しは、生物学者の命題であった。米国カリフォルニア州のレッドベター研究所は、コスタリカに棲息する白アリの小腸から摘出したバクテリアが、最も消化力の強いことを発見した。
繊維の分解の次は分解した繊維をエタノールに変える酵素だが、同社は多種の酵素をブレンドした酵素カクテルを考案したようだ。
ヴェレニアム社のエタノール精製所は当初、さとうきびの繊維(バガッソ)を使って日産一万四千五百リットルのエタノールを生産する。本格操業に入ると、日産三十一万リットルに増量する。同社には、米エネルギー庁から莫大な研究費が交付される。政府の研究費支援がないブラジルとは、雲泥の差である。
米政府は、二〇二二年までに七百九十五億リットルのエタノールを生産する計画だ。そのうち六百五億リットルは、繊維エタノールという。米国には糖分の少ない繊維専用のさとうきびやとうもろこしの幹、高粱の幹、麦わら、稲わら、痩せ地に繁茂する草もある。