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国際収支赤字が急増=産業の体質変わる=生産経済から金融経済へ=帳尻合えば中身は不問?

ニッケイ新聞 2008年6月25日付け

 中央銀行は二十三日、二〇〇八年度国際収支の赤字が予測の百二十億ドルから二百十億ドルに達する見込みと発表したことを二十四日付けエスタード紙が報じた。これは、海外送金が外資流入を上回ったからだ。多国籍企業は、海外で資金を運用するほうが有利と見たらしい。
 中銀は年末までに三百五十億ドルの外資流入を期待しているが、現在までに僅か百三十九億ドルに過ぎない。しかし、確定利つき証券などへの外国投資が流入し、必要分を百四十億ドル上回ると中銀は楽観している。
 金融市場では、浮動資金と呼ばれる流動資金が年度末までに二百五十億ドル入り、国際収支の穴埋めをできると踏んでいる。国際収支の赤字は、純然たる帳簿上の操作と中銀はいうのだが。
 しかし、ドル安に拍車がかかって輸出は益々低調となった今、カネだけ動く実質のない経済活動は、花見酒ではないのか。ブラジル経済は、生産経済から金融経済へ移行し、米経済の轍を踏むのか。
 国際収支の悪化とインフレの到来は、何を意味するのか。多国籍企業の利益送金と経常収支の赤字は、財政体質に定着してしまったようだ。二〇〇七年の貿易黒字四百億ドルは、どこへ行ってしまったのか。
 昨年末までにブラジルへ投じられた外資は、金融投機と直接投資、融資を含めて九千三百九十一億ドル。ブラジルが海外に投じた資金は、三千六百五十億ドル。差し引き五千七百四十一億ドル。二〇〇六年比で四九・三五%増となった。
 これには、二つの見方がある。ブラジル経済の信用度は、健全とする見方がひとつ。もう一つがブラジルへの投下資金は、浮動資金が多すぎるという見方。○○○心と秋の空のように、僅かな変動で雲散霧消する。
 懸念する材料が、まだある。ブラジルに直接投資をした多国籍企業は、輸出ではなく国内市場から吸い上げた利益を本国へ送金している。ブラジルは、多国籍企業によって貧しくなるとも豊かになることはないらしい。