ニッケイ新聞 2008年6月25日付け
ブラジルへの日本人移民百周年を祝っている最中の十八日、EU議会がブラジルを含む外国人にEU加盟二十七カ国への入国を制限する移民法を承認したことで二十四日付けフォーリャ紙が論説を掲載した。
ブラジルが各民族と異文化の融合によるグローバル化を祝っている時に、時代に逆行するような法令制定は皮肉である。ブラジルは二十世紀初頭、農業労働者と農業技術導入のため多数のEU移民を受け入れた。
ブラジルが多数受け入れたEU移民は、餓死線上にあった貧しい人たちであった。殆どは低学歴で言語の習得もままならず、ブラジル社会への同化に苦労した。しかし、ブラジルは寛容に彼らを迎え、全ての協力を惜しまなかった。
それから一世紀、EUは経済的に恵まれ少子化現象に対面。EU各国の出産率は、同数人口を保つ二・一人を下回っている。それを補給するため移民の導入を始めたが、厳しい条件をつけた。
受け入れ国の言語を読解する。不法入国は拘束し、十八カ月以内に国外追放。イタリアは、不法入国者を四年拘束。不法入国者の居住家屋接収。
現在は不法入国者としてブラジル人を虐待しているが、EU移民がブラジルに一宿一飯の慈悲を乞うたときのことをEU当局は忘れたのか。
しかし、EU移民法はテロと麻薬対策の名目でブラジル人学生や旅行者を犯罪人と同じ刑務所へ拘束する。人的および物的、技術、アイデアの交流がグロバリゼーションではないか。EUは、EUの型枠の中へ世界をはめ込むつもりなのか。