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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月27日付け

 皇太子さまが着聖された日、十九日の朝、わが社の編集部に興奮した準二世らしい日系人が飛び込んできた。ガルボン・ブエノ街の鈴蘭灯の下に〃割られた〃日伯両国国旗がずらりと掲げられている、と大きな声を出した。「あんなことをしていいのか」と言うのだ。怒り、あきれた、そんな表情だった▼実は、その話を訊いたとき、どうしてそんなに興奮しているのか、分らなかった。状況を察することができなかったからである。すぐ見に行った▼「ウーン」と思った。確かに割られて吊るされている。しかし、間違えたのではなく、意図したものであることはすぐ分った。割られた日伯両国国旗は、左右に相対している鈴蘭灯に掲げられており、中央で合わせれば一つの国旗になる。アイデアを出し、実行した人たちは、皇太子さまに「両国は今こうなんです」と語りかけ、歓迎の意を表したのである▼ブラジル人の国旗というものに対する態度は奔放であり、身体に巻いたりする。これは愛国の行動である。日本では、若い層は国旗に対し関心度が低い。外国に出て、スポーツ大会などで勝ち、掲揚されたときなどは、ジーンとくるというのだが▼ちなみに、日本の刑法九十二条で、日本人が外国の国旗を破損した場合については刑罰を設けているが、日の丸については、咎めがない▼抗議に来社した日系人は、無条件で日の丸を敬愛している人であった。移民百周年を経て、なおブラジル人のある種の感覚を受け入れられないのもまた興味深い。(神)