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家庭医よりも専門医希望=医学部学生は僻地好まず=カリキュラムで変化も

ニッケイ新聞 2008年6月28日付け

 二十七日エスタード紙が、医学部学生の中で、奥地にある小さな市町村で働きたいと考えているのは五%のみと報じた。
 リオ州など六州の医学部学生を対象にした調査の結果だが、本当に必要な人の所まで届かない医療実態の一部が見える。
 では、なぜ、奥地や僻地での医療は人気がないのか。その鍵は、これらの地域の医師には、総合的な知識、全般的な対応が求められる事だろう。
 記事によれば、学生の六三%は、医学部卒業後は専門医として働くことを希望。そのためには、大学病院などで研修を受け、ある程度の規模の病院に入るか、他の専門病院もある都市部での診療所開設の必要がある。ところが、奥地の医療機関では、一人の医師があらゆる病気やケガに応じなければならず、専門知識だけでは間に合わない。
 ちなみに、国民の保健衛生のために導入されたSUS(統一医療保険システム)では、家族健康計画など、多くの医療サービスを提供しているが、病院が少ない奥地などではその重要性は都市部以上。特に、保健衛生上の問題の七〇%解決を目指して発足した家族健康計画では、医師や看護婦たちによるチームでの地域密着型医療や保健指導が基本なのに、スタッフが不足している。
 また、自分の大学がSUSでの必要に応えうる教育を提供していると考える学生は一二%。学部在学中の準備不足を学生が感じているといえる。
 これを裏付けるのは、十二月八日付け本紙でも報じた医学部最終学年でのテスト結果。サンパウロ地方医学審議会(CRM―SP)のテストでは一時試験で六割が取れない学生が五六%おり、婦人科、小児科、外科の点数が低かったというが、患者の症状や訴えを聞いて総合的な判断をするための知識や経験は一朝一夕では身につかない。
 ただ、カンピーナス大医学部では、四、五年次にSUSの医療機関で研修を行わせた結果、卒業生百十人中十五人が、大学病院での研修ではなく、SUSで経験をつむことを希望という明るい材料もある。大病院の救急外来では患者とひざを付き合わせた診療行為が出来ないが、SUSでは一人一人に向き合うことができるという。
 家庭医的な地域密着型医療のできる医師がいてこそ、専門医も活きる。奥地やSUSでの経験を持つ総合的診断力のある医師の輩出を望みたい。