ニッケイ新聞 2008年7月2日付け
エクアドルとペルーが交戦したとき、ブラジルが米国手法の二極化と異なる両成敗で解決をした。ブラジルの外交方針は、米政府の介入を避けるため平和不可侵条約を基本としていた。
それはフォークランド(マルビナス)紛争で米国が仲裁に入り、亜国の言い分を無視したからだ。そのため南米は早急に安全保障条約を締結し、米国の仲裁を避ける必要があるとブラジルは考えていることをブラジル版ル・モンド・ディプロマティック誌六月号が報じた。
これまで南米諸国に適用された相互補完協定(Tiar)はフォークランド以後、米国によって死文化された。その代替に南米安保理の設置でルーラ大統領は、ライス長官に理解を求めた。
しかし、ブラジル提案の南米安保理も安全保障条約も、コロンビアとベネズエラの確執で座礁し、ジョビン構想ははかない夢と消えた。
ワシントンの米国防本部(JID)を訪ねたジョビン国防相は、かねて懸案のF35戦闘機の購入破棄を通告した。米国が戦略協定を結びながら技術の共有を拒否したからだ。ブラジルは、フランスの技術提供を受けることで合意した。
ブラジル・フランスの技術協定には、原潜の建造も含まれる。この協定は五十年にわたる伯米相互安全保障条約に終止符を打ったも同然。また米国の対南米戦略にもヒビが入った。南米は、貧困と汚職、テロ、組織犯罪の本場であるが、米国はここでの指導権を失ったといえそうだ。
ブラジルは一九八九年、ヴェトナム政府と外交関係を締結。さらに二〇〇四年七月十二日、ヴェトナム国防相を招きヴェトコン軍事顧問団の招聘を取り決めた。
コロンビアは、南米における米軍基地のようなもの。コロンビアによるエクアドル領内への新型特殊爆弾の投下は、ブラジルへのけん制の見せしめといえそうだ。