ニッケイ新聞 2008年7月3日付け
【藤崎康夫=東京支社長】百周年を目前に控えた六月四日、気鋭のジャーナリストによる南米移民に関する渾身のルポルタージュ『日本から一番遠いニッポン 南米同胞百年目の消息』(東海大学出版会、二八〇〇円+税)が日本で出版された。
著者の三山喬氏は朝日新聞記者として学芸部、社会部などで活躍。ドミニカ移民の訴訟問題に取り組み、現地を取材し、中南米移民の強い関心を抱き、一九九八年に退社し、フリージャーナリストの道を選んだ。
取材を通して日系人に深く接する中で、「南米の地とは、日本人の〃血〃と〃文化〃はどうなっていくのか」という思いを抱くようになり、ドミニカ、ペルー、コロンビア、ブラジル、ボリビア、チリ、奥アマゾンにまで足を伸ばして実態を追った。
「移住とは、同化とは…、自分なりの考えが像を結ぶまで何年もかかりました。ありのままの百年史を知りたかったのです」と三山氏は語る。
『ペルー新報』記者とフリージャーナリストという二足のわらじを履いたときもあった。
「ペルーのコミュニティーで、わずか二世代で日本語が消え去り、同化が進んだのは、歳月のせいばかりではなかった。『反日の時代』という大きな障壁が文化の継承を阻んだのである」と日本人たることを拒んだ二世の姿も描く。
また、ブラジルを描いた部分では、勝ち負け事件の当事者へのインタビュー、邦字新聞で記者として活躍する日本人青年らの姿も描かれている。十二章の構成で、明確な視点と確かな文章が冴えた、百周年にふさわしい出版物のようだ。