ニッケイ新聞 2008年7月4日付け
コロンビア陸軍は米情報部の協力により二日、イングリッド・ベルグマン元大統領候補の奪還作戦を実施し、他の人質十四人とともに一発の銃声も聞くことなく見事に救出と三日付けエスタード紙が報じた。人質らは、Farc(コロンビア解放前線)に拉致されて以来六年間、コロンビアの密林に幽閉されていた。
映画を地で行くような奪還作戦であった。幽閉されていた場所は、同国南東のグアヴィアレ県。奪還作戦は、二部にわたって実施された。
先にFarcの中へ潜入した政府特務員が、幽閉場所の警備と管理担当に当たった。特務員は偽情報を流し、内部撹乱を計った。Farcメンバーの内通で、十五人の消息を確かめた。
次は、Farcヘリに偽装した政府軍ヘリ二機に人質を乗せ、Farcボスのアフォンソ・カノがいる南部拠点へ移動すると打ち合わせた。ヘリにはFarcリーダーと寝返りメンバー、人権団体職員が添乗し、人質には全員手錠をはめた。
ヘリ離陸後Farcメンバーの手引きが発覚したため目隠しをしたとき、人質らは奪還作戦に気づいたという。そのとき上空には政府軍ヘリ三十九機が、万一失敗したときの非常作戦として旋回待機をしていた。
人質十四人のうち三人は米情報部のメンバーで、麻薬ルート捜査のためコロンビアへ潜入し、Farcに拘束されていた。コロンビア政府には、他にも情報収集で米情報部員が常駐している。これで残る人質は、市民二十二人と治安当局員三人となった。
米情報部は、人質の幽閉場所として二カ所を睨んでいた。幽閉の可能性は、七〇%と三〇%で的中。ゲリラの人数と付近の地形、隠れ家の配置図も把握し、奪還方法や作戦、携帯武器も指示。
奪還訓練は、最近開発した地下へ深く貫通する小銃M4で行った。奪還訓練に米軍が、技術的指導で関わったことは極秘である。ウリベ大統領も、多くを語らない。
ルーラ大統領は奪還作戦の成功に賛辞を送った。同時に一抹の不安も残った。ブラジルは再々、各国から人質救出で協力を頼まれた。しかし、Farcとの接触にちゅうちょした。今度は、作戦に米情報部が深く関わったことだ。