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日伯経済一気に緊密化へ=実りあった甘利大臣訪伯=エタノールでは民間も参入

ニッケイ新聞 2008年7月4日付け

 現職大臣としては二十四年ぶりとなる甘利明経済産業大臣のブラジル訪問。大臣は先月二十九日にサンパウロ市で行なった会見の席上、百周年、日伯交流年の今年を「両国関係を強化する最大のチャンス」と位置付けたが、その言葉通り、一日からのブラジリア訪問ではバイオエタノール、資源、貿易関係など、両国経済に関わる重要案件が次々とまとまっている。
 着聖後、鉄鋼大手ウジミナスやコザン社のエタノール工場などを視察後ブラジリア入りした甘利大臣は、一日にロウセフ官房長官、ロボン鉱山動力大臣、ミゲル開発商工大臣、ルーラ大統領と相次いで会談した。
 ロボン鉱動相との間では、ブラジル産鉄鉱石の調達での協力を確認。
 ミゲル開発商工相との会談では、両国のビジネス機会拡大を目的とした「貿易投資促進官民合同委員会」を設置することで合意。知的財産権や税制など、ブラジルへの企業進出、経営にあたって問題となってきた諸課題について国レベルで検討する場ができることになる。
 バイオ燃料に関して同じく共同通信は、大臣とルーラ大統領との会談で、大統領がサトウキビを原料とするバイオエタノール燃料から「バイオプラスチック」を作る技術を開発する意向であると報じた。
 会談後の会見で甘利大臣が明らかにしたもの。今月開催される北海道洞爺湖サミットで地球温暖化に対するブラジルの取り組みを強調するねらいもあるようだ。
 同日にはまた、〇六年以来二回目となる両国閣僚級の「エタノール作業部会」がブラジリアで開かれ、ブラジルからのバイオ燃料調達に向けた協力を強化することで合意した。
 こうした流れの中、三井物産は同日、ペトロブラスとの間でサトウキビを原料とするバイオエタノールの生産・販売事業に参画すると発表した。
 サトウキビの栽培、バイオエタノールの生産から、日本・欧州への輸出、バガス(搾りかす)で発電した電力の販売まで予定した幅広い参入だ。事業予定地はゴイアス州イタルマ市。総事業費は四百五十万レアルで、両社が共同で四割を出資する。〇九年下期からのエタノール製造・販売開始を予定している。生産量は年間で最大約二十万キロリットル。
 ペトロブラスはさらに、東京電力との間でもエネルギー資源と電気事業分野における交流協力を目指す交流覚書を締結した。今後、両社間で事業に関する情報交換、専門家派遣などを進める予定。東京電力では今後の交流を通じ、燃料調達等の安定化を図るとしている。
 このほか、日本経済新聞によれば、大臣とルーラ大統領との会談では、日本方式地上デジタル放送の中南米諸国への普及のため両国が共同で取組むことが合意された。日本側からは、ブラジルでの半導体産業育成に協力する方針が伝えられたという。