ニッケイ新聞 2008年7月9日付け
G8サミットは七日、ブラジルとメキシコ、インド、南アフリカ、中国などの途上国を二〇〇九年からG5二軍として控え室で待機させる方針と八日付けフォーリャ紙が報じた。待機組はサミット最終日にのみ出席を許し、発言の機会は与えない。またEUのバーロス委員長は、ブラジルに対し持続可能なエタノール供給の保証を求めた。
ルーラ大統領が嫌ったG8サミット招待は、二〇〇九年サミットの議長国であるイタリアのベルスコーニ首相の要請で、二軍控え室待機が正式に決まった。サルコジ仏大統領のG8+G5増員案は、却下された。
G8は既存のメンバーによる枠組みが完成しており、新人の飛び入りを伊首相が米国の合意を得て拒否した。G8本番は従来のメンバーのみで協議を交わし、声明文を作成発表した後の最終日にG5を招くことにし、途上国の口を封じた。
これまで国際経済を操作してきたG8のテーブルに、途上国メンバーが割り込んで発言するのは許されないと伊首相がいう。ましてメンバーをさらに五人増やす仏案は言語道断という。途上国はその分際を守って、初めて先進国と同席が許されるらしい。
G8では世銀のゼーリック総裁が食糧危機の到来を警告し、先進国にその責任を求めた。ルーラ大統領は食糧危機の元凶は、農業補助金制度を設け途上国の農業発展を阻害した先進国の責任だと訴えたが、その発言は封じられた。
世銀の計算によれば、世界食糧危機の犠牲者はさらに一億人増える。世界では現在、八億五千四百万人が栄養失調である。総裁はG8に対し、次の三点で即時対処する必要があると要求した。一、極貧国の学校給食と授乳する母親の栄養補給。二、小農への種子と肥料提供。三、二十六カ国で実施中の食糧輸出制限阻止など。
農業大国ブラジルの出番は、ないらしい。EUから環境破壊による食糧やエタノールの不買を宣言された。食糧危機についてG8は、総論賛成各論反対で責任をなすりつけあうだけ。G8は約束だけで実行しないと、途上国の信用が全くない。国連事務総長は笛を吹くが、誰も踊りそうにない。