ニッケイ新聞 2008年7月11日付け
十日エスタード紙が、ブラジル教育の弱点は質の良い教師の不足にあると思わせる記事を掲載した。
それによると、国内の教師の七〇%以上は私立大出身で、仏語、化学、物理の三教科以外は私立大出身教師の方が多いという。大学数からいけば当然だが、「一般的に私立大生のレベルは公立大生より低い上、教師の多くが公立学校で教鞭をとっている点が問題だ」とあるのが気にかかる。公立校生徒の学力は私立校生徒より低い傾向がある一方、八〇%の教師が公立校で教えている。
これを六月九日のフォーリャ紙記事と比較するともっと深刻で、二〇〇五年の、高校卒業時または同等の学生向け学力テスト(Enem)受験生へのアンケート結果では、Enemで上位二〇%に入る学生中、教師になりたいは五%のみ。受験生全体でも一一%だが、教育学部選択の理由は、教育学部にしか入れないからが最多という。
教育学部志願者中、家族収入が三最低賃金以下は四八・五%、公立校出身は八〇%、母親の学歴は四年生以下が五〇%。サンパウロ州最大の教育学部を抱えるUnifaiでは、学生の基礎学力不足が著しく、ポルトガル語、数学などの補習の必要があるという。さらに、公立大学での教員資格取得には四年かかるのに、私立大学の多くは三年。実習や卒業後の研修も不十分らしい。
しかも、教師の給与は大卒一般より低く、仕事はきつい。責任の重さや社会的評価、給与からいって割に合わないと考える学生も多い。先日の国会で、小学校から高校までの基礎教育部門教師の最低給与は九五〇レアルと決められ、給与格差こそ減ってきたものの、より高い給与を求めて別の職種に就く例や、学部中退者もまだ多い。
でもしか先生で、備えもなく教壇に立つ教師が効果的に教えられるか、また、生徒に本当の学力がつくのかを考える時、高校生の学力で世界一、二の韓国やフィンランドでは、高校で五%と一〇%に入る成績上位者のみが教員になれるということの意味は大きい。
六月二十日付けフォーリャ紙には、教師の能力や質とその価値を認め、その向上のための投資やインフラ整備が効果的な教育の鍵で、四歳までに覚えた単語数がその後の学習能力に影響するとの論も。良き教師に出会い、良き教育を受けた子どもが親や教師となり、次世代を育てていく姿が見たいものだ。