ニッケイ新聞 2008年7月11日付け
北海道洞爺湖サミット出席のため訪日したルーラ大統領と福田康夫総理大臣との首脳会談が九日に行なわれ、席上、同席したアモリン外相から浜松市にブラジル総領事館を開設する予定であることが表明された。これにより、三十万を超える在日ブラジル人社会に新たなよりどころができることとなる。この日の会談では、日本の新幹線技術など両国経済関係の将来についても幅広く意見を交換。ルーラ大統領が福田総理にブラジル訪問を要請するなど、さらなる関係緊密化に向けた一歩を踏み出した。
日伯両国首脳の会談は、〇五年五月の大統領訪日時以来、三年ぶり。会談は九日午後七時から、サミット会場のホテルで約三十分間行なわれた。
外務省の発表によれば、福田総理は百周年の節目での大統領訪日を歓迎。先月の皇太子さまご訪伯の際のブラジル政府の協力に感謝を表し、これを機に今後の日伯友好協力関係を前進させるため協力したいとする意向を伝えた。ルーラ大統領からも、皇太子さまのご訪問はブラジルにとって光栄だったと伝えられた。
経済分野に関しては、福田総理がリオ―サンパウロ市間の高速鉄道計画に触れ、「新幹線技術がブラジルに導入されれば、両国の協力関係発展の目に見えるシンボルになる」との考えを示した。大統領はこれに対し、日伯の経済関係はその補完性や規模から考えてもっと大きな規模であるべきとの考えを伝えるとともに、両国関係強化に向けた福田総理の来伯を要望した。
このほか、福田総理からは、サンパウロ州ビリングス湖流域での環境改善計画とサンタカタリーナ州沿岸部での衛生改善計画に対し、約二億ドルの円借款を供与する意図があることが明らかにされた。
伯総領事館、浜松に決定=四年越し誘致活動幕切れ
「我が町にブラジル総領事館を!」――。静岡県、広島県、大阪府が繰り広げていた誘致合戦は、九日の日伯首脳会談時にルーラ大統領が浜松市に設置する方針を福田康夫首相に伝えたことを受け、幕切れを迎えた。
静岡県浜松市は〇四年十一月十六日、総領事館を誘致すべく、市職員ら三人を首都ブラジリアへ送り、二万九百八人分の署名を外務省在外ブラジル人支援局に手渡した。
〇四年九月に小泉首相(当時)が来伯したことから、翌年にルーラ大統領が訪日する公算が高まり、その時に発表されるのではとの推測から、広島県、大阪府なども名乗りを挙げ、いずれも知事自らが在京ブラジル大使館に売り込みにいくなど、熱心な誘致活動を繰り広げていたが、結局〇五年の訪日時には決定されなかった。
ルーラ大統領が洞爺湖サミットの機会に訪日し、四年越しとなる決定を福田首相に伝えた。その間、浜松市周辺で起きた事件を中心とする国外犯処罰(代理処罰)問題が持ち上がるなど、情勢もかなり変化した。東京、名古屋に続いて国内三カ所目となる。
この決定を受け、一自治体としては日本最多のブラジル人人口二万人弱を抱える鈴木康友市長は、静岡新聞の取材に応え、「ブラジル本国の政府機関が身近にあるということは、ブラジル人市民にとって大きな心のよりどころ。共生を目指す浜松市としても大きな前進ととらえている」とのコメントをよせた。先月、来伯していた鈴木市長は、連邦議会でもキナリア下院議長らに設置を訴えるなど、継続的にアピールをしてきた。
さらに同紙は、石川嘉延知事の話として「これまでのブラジル政府などとの交渉の中で、好感触を得ていた。県内の在日ブラジル人にとって、利便性を考えると朗報だと思う。われわれにとっても、ブラジル政府に要請することを思うと、好都合だと考えている」と報道した。