ニッケイ新聞 2008年7月12日付け
六月二十五日エスタード紙に小さな棺満載の手押し車の写真掲載以来、パラー州ベレン市のサンタカーザ・デ・ミゼリコルディア病院での新生児死亡の報が伯字紙に繰り返されているが、今年六月の同病院の新生児死亡率は、世界保健機構が定めた一五%をはるかに上回る二一・七%。五人に一人の赤ん坊が死亡し、子どもの葬儀が毎週二回繰り返されるという報は衝撃的というほかない。
同病院では二〇〇五年以来一四・三%~一七・五%の新生児死亡率だというが、十一日エスタード紙によれば、今年の五~六月は二〇%を超え、六月は五四人が死亡。今年の累計は二六二人に達している。この数には、同病院で出生、死亡の新生児の他、他の病院から転送された新生児死亡者も含まれている。州内最大の産院である同病院には、重症だから転送される例も含め、州内各地からの妊婦や新生児が来院。が、それだけが高い死亡率の原因ではない。
六日エスタード紙によると、検察庁検査員は、ねずみやゴキブリ、デング熱を媒介する蚊など、衛生管理の問題も指摘。また、病院稼働率は常に四〇%はオーバーの状態で、患者に十分対応できない、医師から州政府への問題提起がなされ、改善のための組織ができてもそれが機能していないなどの問題もある。
また、パラー州は、収入や教育レベル、上下水道の整備率も全国平均よりも低いなど、州としての根本的対策も必要。保健衛生関係予算の不足は各地で言われるが、六日エスタード紙が、少なくとも、分娩室に一四人、集中治療室に二一人、新生児室に一四人の医師が不足し、小児科病棟の新設も必要と報じた後、九日伯字紙が、同病院に対し百万レアルの支出が決まったと報じた。
しかし、予算配布や施設建設が決まっても、管理ができなければ元の木阿弥。医師の一人の「ここに欠けているのは管理運営能力だ」との指摘は傾聴に値する。
院長交替後、院内感染の起きていた可能性検査中の同病院。過密状態では感染も起き易く、医師らも過労。この状態で現状分析、対策の検討と実施、効果測定もというのは酷かも知れないが、計画、実施、効果測定、対策という品質管理の輪が回らなければ、同病院の現状改善はないことも認識すべき時が来ている。