ニッケイ新聞 2008年7月15日付け
サンパウロ市役所住宅課(Habi)は十二日、サンパウロ市の人口増加率〇・六%増に対しスラム街居住者が四・二%増で膨張と発表したことを十四日付けフォーリャ紙が報じた。スラム街は人口増に対し、全市街地に占める面積の割合縮小で、スラムの垂直化が始まり合併がブームになっている。
二〇〇〇年から二〇〇七年にスラム街の人口は、六六〇%増えた。高級住宅街モルンビーに隣接するスラム街パライゾポリスは一九六〇年ころ、森の中であった。それから四十年の間に、掘っ立て小屋が所狭しと林立した。
やがて掘っ立て小屋は煉瓦造りに変わり、今は屋上に階を重ね始めた。これを都市の密集化と呼ぶ。パライゾポリスは立錐の余地もなく、新たに掘っ立て小屋を建てることは不可能だ。
しかし、地方から知人を頼って上京する者は、後を絶たず超満員だ。残る道は、上に伸びるしかない。スラム街の出産率と児童の扶養数は、一般市民のそれより遥かに多いから、スラムの人口膨張率も高い。
サンパウロ市の住民は、一平方キロメートルに二万三千人が居住する。ベラ・ヴィスタ区のスラム街は同面積に六万五千人が居住する。住宅密集地域は空気の循環が悪く、伝染病が感染し始めたら、ひとたまりもない。
市当局も過去二十一年間はスラム街の撤去に努力し、五百四十八カ所の移動や合併を行った。二〇〇一年以降、新たに発生するスラム街は年間十カ所以下に止まった。特に南部水源地帯のスラム街は東部へ移動させ、住民を半分に減らした。
家賃を払う経済力がない低所得者は宅地造成が不可能な空き地を狙う、と関係者が警告している。サンパウロ市北部ならカンタレイラ丘陵地帯、南部なら水源地帯である。
スラム街の住民は、スラムから出ない。ぬるま湯から出ると風邪をひくと思うらしい。スラムの空気に慣れると、出ることに恐れを感じる。
住み慣れると、掘っ立て小屋の周囲に煉瓦を積む。家族が増えると、コンクリートで天井を張る。さらに煉瓦を積んで、二階ができ三階ができる。一国一城の主だ。