ニッケイ新聞 2008年7月15日付け
ブラジルは理想社会の建設に向けて帝政から共和制に交代したはずだが、共和制政治が忘れたのか看過したのか取り残された底辺という問題があるとブラジル版ル・モンド・デイプロマティック誌七月号が報じた。
二十一世紀の始めに二つの思想が衝突したため、格差是正政策は麻痺し、貧富の差が拡大した。世界は、ネオリベラル派の主張に従って金融のグローバル化を図ったからだ。
ブラジル金融市場の関係者は、現行の所得再分配制度を維持するため、金融システムの脱政治化を図った。そのため、富の偏在と社会格差は益々広がって行った。
ブラジルでは、さらに技術革新と生産性向上が労働の概念を大きく変えた。先進国の例に従い、高度に訓練された技術者と破格の給与、それに伴う社会的地位が生まれた。一方では単なる生産労働が卑しめられた。
これまでの生産ライン労働者は、薄給で酷使され、前世紀水準の地位に落された。金融グローバル化は、政治的にも経済的にも時代に取り残された人たちを増やした。
ブラジル社会の二極化と社会疎外は、誰が見ても明白である。これは社会構造の退化といえる。以前は資本主義がもたらした矛盾だとして、格差是正の社会運動が展開された。しかし、今は技術革新と生産性向上が、それを不透明にした。
経済の第三セクターでは従来の職場に新しい戦力を注ぎ込み、サービスの生産が始まった。従来の工場では、労働が時間で計られた。生み出した価値を、労働時間によって分配した。
サービス生産は職場や時間に束縛されなくなり、家庭や町中、空港で労働が可能になった。インターネットや携帯電話などの通信技術の発達により、労働の質と給与の計算法が変わったのだ。サービスに対する報酬が、産業革命をもたらしたといえそうだ。