ニッケイ新聞 2008年7月16日付け
最高裁のメンデス長官は十四日、ジェンロ法相がダンタス頭取仮拘束による取調べ決定に合意したのは、法相として不適切だと批判したことを十五日付けフォーリャ紙が報じた。「法相は連邦警察や地裁判事の対処を賞賛したが、それは何の責任もない一般市民の場合だ。両者の対処は、軍政時代の見せしめ的手法だ」と糾弾した。
連邦地裁のサンクチス判事は二度にわたって、最高裁が釈放した頭取を再拘束した。サンパウロ市では判事や検事四百人が、最高裁長官の見解は裁判官の権限を制約するもので、犯罪の審理ではなく裁判官の審理に対する審理であると訴える抗議集会を開いた。
最高裁長官は「法相が記者会見の折、頭取が無実を証明するのは困難だと発言したが、無実か否かの判断は裁判官の役目で法相の役目ではない」と批判した。「法相が、一般市民を賞賛するのはよい。しかし、連警や判事の対処について、その是非を判断する権限は法相にない」と戒告。
裁判所や検察庁に対する弁護士の抗議集会に最高裁長官は出席。「連警と検察庁、裁判所が共同作戦で作為的に活動し、仮拘束を判決前の禁固処分に利用するのは、明らかに誤った前提である」と批判した。
本来の役目は警察が取り調べ、検察が告発し、裁判所が起訴か不起訴、拘束か非拘束を判断する。これらの役目が八百長的に行われると、最高裁は法的手続きが歪められていると指摘する。
容疑者の拘束が見せしめ的に行われると、国民に先入観を与え、事実の審理が行われる前に有罪判決を下すようなものだと長官はいう。
一方、判事や検事、検察の抗議集会では、サンクチス判事が再々度ダンタス頭取の釈放仮処分が発令されたら、一命を賭けて最高裁長官に対決すると宣言。最高裁の仮処分は、最高裁判事複数の判断ではなく長官の個人プレイだという。
最終決定ではないが、アマラウ検事の提案で最高裁長官の弾劾手続きを行う意向で検事らは一致した。長官の頭取釈放は一審の証拠物件や判事決定だけで判断し、二審と三審を無視したため裁判法に抵触するという。前代未聞の最高裁長官の弾劾審議に、アウヴェス上院議長は首をかしげた。