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テレビの影響と社会通念=連続小説で家族構成変化=マスメディアの功罪認識も

ニッケイ新聞 2008年7月16日付け

 十三日エスタード紙によると、連続テレビ小説(ノヴェーラ)は、日常の話題提供だけでなく、出産率や子どもの命名、社会通念形成にまで影響を与えているという。
 これは、一九六五年から一九九九年放送のノヴェーラを解析した論文「ノヴェーラと出産率:ブラジルの場合」などに基づく報告で、グローボ局放送の番組一一五本と、人口構成比や出産率などとの関係を分析している。
 それによると、ノヴェーラに出てくる家族は町に住む上中流家庭という設定が多く、登場する女性には子どもがいない六二・二%、子ども一人二〇・七%、子ども二人九%。これにより、ノヴェーラの主要家族は少子家庭で裕福かつ幸福というイメージが出来た。一方、貧しい家庭のイメージは、子沢山で幸福そうには見えない。
 こういったノヴェーラの影響は、妊娠可能な年代で経済的に中の下か下のクラス、かつテレビを最大の情報源とする女性中心に出ているという。
 一九六〇年に六・三人であったブラジル人女性の出産数は二〇〇六年には二・〇人に減少。一九九六年と二〇〇六年の人口構成比較では、二十歳以上の層は人口が増えているが、二十歳未満は男女とも減少。ノヴェーラの影響で少子化、高齢化が進み、人口構成比が変化したと見られている。
 また、五〇年代以降、農村から都市への人口移動が進み、現在では人口の八〇%が市街地在住。さらに、自分の子どもにノヴェーラの登場人物名を付ける親も増えた。
 研究者の中には、はっきりと「ノヴェーラは社会通念形成に影響する」と述べる専門家もおり、登場人物が白血病で苦しんだノヴェーラ放送後に骨髄提供者が増えた例を挙げている。また、言語の共通モデル提示といったプラス面の他、メキシコの番組とブラジル製作の番組では社会性の差などがあり、国内番組の影響力はより大きいという。
 最近はインターネットも普及し、影響力とともに内容や質も落ちたとされるテレビ。子どもが見る時間帯の菓子類宣伝制限の動きや、宣伝で整腸効果をうたっているヨーグルトがうたい文句ほどの効果なしとされた例もあるが、第二次大戦前の日本で参戦気運を高めるのに利用されたのもマスメディア。テレビの情報は正しいと鵜呑みにするのではなく、本当に良いもの、正しいものを見極める目の育成も必要だ。