ニッケイ新聞 2008年7月18日付け
命の重さは皆同じだが、二週間足らずの間に、一般市民が警官の手にかかって死亡する事件が連続発生している。
六日のリオ市でのジョアン君殺害は九日本紙既報だが、窃盗犯追跡中の軍警は、被害者母子の車を犯人のものと誤認し、射撃。三歳のジョアン君は死亡。母親が負傷し、弟のイスにも弾の跡。
次はパラナ州で十三日未明、犯人追跡中のパトカーに衝突した車を、犯人の逃走を助けるための行動と判断した軍警が、射撃。女性一人が死亡し、男性一人が負傷。
さらに、十四日夜、リオ市で起きた電撃誘拐の被害者は、車ののっとり犯とともに軍警の射撃を受け、死亡。車をのっとられ助手席にいた被害者は、運転が荒いと追跡し始めたパトカーに向って犯人が発砲したため、応戦した軍警により被弾したもの。十六日に犯人も死亡し、真相解明が困難となったが、軍警は被害者も犯罪者だと思い込んでいた。この件に関しては、州保安局長らが、軍警が被弾することは許されず、犯人からの射撃に対する応戦は適切な行動であったと弁明した。
この他にも、リオ市では、密売者摘発に巻き込まれた六歳の少年、犯罪者と誤認された青年歌手、判事の娘護衛の軍警に射殺された学生、ランハウスの摘発に巻き込まれた八歳の少年、一月以上行方不明となっていた後、遺体で発見の女性技師など、二カ月間に少なくとも七人が軍警によって死亡とされている。
誤認、誤射も含め、リオ州警官による殺害は一~四月だけで五〇二件。九日エスタード紙は、昨年はリオ州一三三〇件、サンパウロ州三三七件、全国で一一九五件の殺害が起きており、両州での件数は圧倒的に多いと報道。
このような状況は、犯罪多発で強いストレス下にあるといっても見逃し難く、警察組織内外からも、治安政策見直しを求める声があがっている。
十七日伯字紙ではリオの特殊部隊教官による講習会の様子も報じられているが、教官は、誰何もせずに発砲する行為は誤りなど、三通りの状況設定で訓練実施。危険を伴う現場に派遣される部隊教官が、むやみに撃つなと教え、他の当局者が軍警の行動は正しいとすることに矛盾も感じるが、命の重さを痛感するからこそ、命を大切にと説くのだろうか。犯罪者が組し易い警察であってはならないが、命の重さや、残される家族らの過ごす日々の重さを考え直す時であっても欲しいもの。