ニッケイ新聞 2008年7月19日付け
今年もまた「日本祭り」がやってきた。笠戸丸から100年で賑やかな祭りになりそうだし催しも多い。「歌の親善大使」の吉武まつ子さんが日本の歌曲やクラシックをー。宮沢和史さんは詩と曲も自作の「島唄」を披露し、パラグァイの県連からも応援団が駆けつけ物産展を開くから大いに楽しみたい。今や人気の太鼓や「踊らにゃ損々」と阿波踊りの威勢のよさをじっくりと味わいたい▼だがーこの祭典が始まった頃は「郷土食大会」と呼んでいたように記憶しているし、舞台の主役は「芥子蓮根」や「薩摩揚げ」とか昔から伝わる田舎の食べ物である。言わば、素朴で純朴な「おふくろの味」を舌に乗せ胃の腑をいっぱいにしながら口福に酔い痴れる喜び。京の都の御手洗団子がなかなかだし、秋田の「切りたんぽ」は山のうまさが染み込む汁がいい▼甲州の「ほうとう」は武田信玄が愛したとされる饂飩でカボチャが欠かせないし、豊後では「だんご汁」という太い手延の饂飩を里芋や人参などの野菜を味噌で煮込んだ料理だそうな。池波正太郎の「剣客商売」に「一本うどん」という傑作があり、親指ほどの饂飩が出てくる場面があるけれども、あんなではなかろうがーどうもそれに近いような感じがする。今回は客の行列に入り是非にも試したい▼美濃と飛騨の岐阜県がやっと県連に加入したとかで高山地方の名産「朴葉寿司」を引っさげての見参が嬉しい。鮨飯に鮭ときゃらぶきを置き朴の葉で包んだものらしく、物の本には木曾義仲も大好きな弁当だそうな。これもまた木下謙次郎の「美味求真」にある美味に違いなく、何としても口に運び味覚を仰天させたい。 (遯)