ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | ドーハ・ラウンド=最後の正念場が開幕=決裂は混迷を招く=食糧と原油が切り札に=外相の失言でブラジル減点

ドーハ・ラウンド=最後の正念場が開幕=決裂は混迷を招く=食糧と原油が切り札に=外相の失言でブラジル減点

ニッケイ新聞 2008年7月22日付け

 終盤を迎えた世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンド(多国間交渉)でアモリン外相は二十日、十九日の外相発言を逆手にとって、先進国がブラジルを外交的窮地へ追い込むため奸策を計っていると訴えたことを二十一日付けエスタード紙が報じた。ブラジルが工業製品に対し全面市場開放に応じないなら、農産物の受け入れを必要最低限に止めるというもの。
 EU案は、ブラジルに工業製品の全面開放を要求し、農産物の全面開放を不可とする不都合なもの。米案は、農産物補助金を一部削減に止め、工業製品には全面開放を求める。全先進国はこれに同調せよというエゴ剥き出しの話である。
 ドーハ・ラウンドは七年間、双方が硬直状態のまま終盤を迎えた。外相が、時代は移り、ドーハ・ラウンドに払う代価も一変したと言明した。一年前に提出した価格を、現在も払う意向はないと先進諸国へ通告した。
 先進国が譲歩をしないならドーハ・ラウンドは決裂し、世界は無秩序時代に入るとアモリン外相は警告した。同ラウンド準備会議でマンデルソンEU代表が、提案は途上国の産業保護のためだと恫喝発言をした。
 一方、アモリン外相が、米国の裏工作をナチスのゲッペルス宣伝相の政策になぞらえ、「ウソが現実となる」と発言した。「先進国は詭弁を使って途上国を欺き、自分は約束を果たさない」と主張したかったらしい。これは出席者の心証を害したようだ。
 米代表のシュワッブ女史はナチス収容所犠牲者の娘で、発言の解釈が異なる。欧米ではナチスがタブーであり、引き合いは冒涜を意味するようだ。外相は謝罪したが、ブラジルにとって減点といえそうだ。
 同女史は、アモリン外相の発言を外交問題にすり替えようとしている。外相は「無理が通れば道理が引っ込むという」主張は譲らないという。ゲッペルスがいった「ウソを百万回いうと人々は本気にしてしまう」がブラジルでは格言となっており、米国の外交ではいつもこの手を使うと訴えた。 
 世銀のゼーリック総裁は、WTO最後のチャンスだと警告した。「同ラウンドが失敗するなら、世界は食糧とエネルギーの狂乱時代に入る。今まさに国際経済を歪める保護貿易が問われている」と冷静さを求めた。