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飢餓を描いてから半世紀=監督の目には大きな変化なし=食の安定欠く人々はまだ現存

ニッケイ新聞 2008年7月22日付け

 ブラジル飢餓に関する「餓の地理」(一九四八年)の著者ジョズエ・デ・カストロは、持続可能な発展を当時から訴えていたらしいが、北東伯の飢餓の実態は五十年間、大きな変化がないと二十日エスタード紙が報じた。
 一九五八年に北東伯の飢餓についてのドキュメンタリーを製作した映画監督ナンニ氏。当時見られたのは、旱魃を逃れるために移動する人々の列や、乾いて割れた大地、死にかけた家畜の群れ。それが見当たらない今、現地の生活は改善されたといえよう。しかし、一昨年十月に再び同地域を訪れたナンニ氏がそこで見たのは、遅々として進まぬ発展の姿だった。
 確かに、五日本紙でも報じた通り、北東伯の栄養失調児は、一九九六年から二〇〇六年の十年に二二・二%から五・九%まで減少。全伯の新生児死亡率は四四%も減少など、目に見える変化もある。しかし、経済的に不安定で、食の保証に欠く人々がそこにいる。
 二〇〇四年から〇六年にかけての調査では、食の安定度に重~中度の欠けがある家庭(食事回数や量を削っている家庭)は減ったが、軽度の欠けがある家庭は増加。しかも、重~中度の欠けがある家庭減少は、政府の生活扶助に大きく依存。十一人の子沢山で六十歳の農夫アラウージョ氏宅では、生活扶助の一八〇レアルで買った食料が尽きれば畑で取れるものでつなぐが、食事の準備は床に置いた二つの石の上。ナンニ氏の目には、五十年前と同様の暮らしを繰返す人々がそこにいる。
 現在、ブラジルで食の保証のない人々は一一〇〇万人。栄養失調児や、飢餓で死ぬ人の数は確かに減少。しかし、ごみをあさり、フェイラ後、腐りかけの野菜などを拾い歩く人々がいては、飢餓がなくなったとはいえまい。
 二十一日フォーリャ紙によれば、インフレによる資金不足で政府の基礎食料品セット支給は昨年の二〇〇万から一五〇万に減る。しかも、生活扶助もない人々にとり、八品目で二二キロのセットの支給は、二カ月に一度が三カ月に一度になるなど、影響は深刻。
 二十日エスタード紙のA、Bクラスも中流階級の購入する品物購入との記事を見ると、経済的逼迫は国全体。経済格差の大きいブラジルで、すべての国民に食の安定をとの政府公約が実現するのははるか先のことのようだ。