ニッケイ新聞 2008年7月23日付け
二十日フォーリャ紙と二十二日エスタード紙とが、サンパウロ州の歴史的鉄道路線二つの復活を予告する記事を掲載した。
フォーリャ紙掲載の路線は、国内で唯一、十九世紀の建設時の特徴を残している鉄道の里、サントアンドレー市パラナピアカバとサンパウロ市ルス駅とを結ぶ四八キロで、九月か十月に運行開始の予定。パラナピアカバ駅はサントス~サンパウロ市を結んだサンパウロ州鉄道(SPR)路線の中ほどに位置し、一八六〇~一八六七年の操業時には、八〇〇メートルの標高差を上るケーブル列車の終点として、作業員の野営地もあったという。
列車の運行は日曜日一回の旅から始まり、その後は土、日に拡大。バッド社製機関車での定員一七八人の旅は約七〇分の小旅行になる。
復活の主要目的は観光による町の活性化で、ガイドによるSPRの歴史解説他、パラナピアカバ城やSPRの技師長宅、ケーブル鉄道博物館巡りなどが目玉。人口一四〇〇人の鉄道の里だが、週末には国外も含め四〇〇〇人の観光客が訪問、市内では六年間に一七四の宿泊施設も建設された。二〇〇九年にジュンジアイ~ルス間のフルーツ列車が開業したおりには、双方を訪れる観光客もと期待されている。
また、パラナピアカバはユネスコの世界遺産指定にも立候補しており、指定されれば国内で十八番目の世界遺産となる。
一方、エスタード紙掲載の路線は、サンパウロ市ペルースと奥地のピラポラを結んでいた。全長二〇キロのうち五キロで線路の修復が終り、二〇人乗り機関車での旅復活の予定。一九一四年建設で一九八三年まで操業の同路線は、カジャマールのポートランド・セメント(既に廃業)の石灰などを運ぶ産業路線でもあった。
今回の計画には、サンパウロ市のごみ処理施設処分による排出権取引での収入などがあてられ、環境にも配慮した観光鉄道復活を謳っている。二〇〇人の雇用も予定され、ポートランド・セメント社を記念するミネラル駅からポルタル・アンニャングエラ駅(同名のバスターミナルに接続)まで、テーマに従った五つの駅開業が計画されている。
この路線で運行される列車はプリンセジーニャと呼ばれるが、観光客や地域住民を運ぶ列車復活には、祖父はイタリアから鉄道業務のためにやってきたというカマルゴ氏ら、多くの人の夢も込められている。