ニッケイ新聞 2008年7月25日付け
本紙にときどき掲載(日本における記事の転載)される料理のページについて、注文があった。材料名が理解できない、というのである。つい最近は、七十三歳の二世男性が便りを寄せた▼年金生活者になってから、ときどき、妻の邪魔をしながら台所に立つようになった、と前置きし、「材料のところに分らないカタカナ語が一つあると、もうつくれない」と書いていた。この人は、カタカナは和製英語とみ、これを日本語で書いてほしい、と望んでいた。先にミもフタもなく言ってしまうと、わが編集部内に、カタカナを日本語にできる部員はいない▼日系人の料理研究家に問い合わせたところ、カタカナの多くはフランス語だった。そのカタカナをその都度料理のレシピ(食材名と調理方法)とともに示してもらえば、有効に日本語で解説できるが、単語一つだけでは納得のいく説明がむずかしいかもしれない、と語っていた。察するに、昔は日本に存在しない(現在はある)食材で、該当する日本語がないものも多いということか▼便りの主の二世男性だけでなく、料理が好きで、日常いつも興味をもっている一世女性も「フランス語の氾濫は困る。わからない食材の多くは香辛料でしょうね」と見当をつけていた▼キツい読者には、掲載を担当している編集部員がわからない食材を紹介するのは、けしからんではないか、とお叱りを受けるかもしれない。今のところ「やはり、転載したほうがいいのでは」と続けられている。(神)