ニッケイ新聞 2008年7月29日付け
ブラジルはインフレが五・四一%に達し、経済成長率よりもインフレ率が愁眉の話題になった、とブラジル版ル・モンド・ディプロマチッケ七月号が報じた。一九九〇年に取り押さえたドラゴンはいま、檻を抜け出したらしい。
食糧インフレの元凶は、多国籍食糧メジャー六社のカルテルである。カルテルは、食糧の生産と物流、販売、種子、国際価格を管理してきた。いくらブラジルの大豆成金といえども、食糧メジャーに生殺与奪の権を握られているのだ。
農産物コモディティの先物市場は、餓死者を食い物にして儲ける鬼たちの集まりである。食糧危機で餓死者が出ると、先物市場は強気となり、資本市場の新しい稼ぎ場が生まれるのだ。
食糧高騰のために栄養失調や餓死者を出した国は、象牙海岸やエジプト、カメルン、バングラデッシュ、インド、フィリッピン、ハイチ。社会不安から政情不安に至った国は、三十三カ国。
古代の戦争は全て、食糧争奪戦であった。食糧不足が政情不安を生み、飢餓難民の移動を引き起こす。食糧は、政治圧力や新たな紛争の起爆剤になる。経済が不安定な国は農業資材の不足で食糧輸入国になり、食糧危機に拍車をかける。
原油高騰と同じように食糧高騰も投機家によって起こされる部分が大きいと、多数の団体が訴えた。飢餓は金儲けのチャンスをつくり、それで暴利を貪る者たちが世界にゴマンといるのだ。
餓死者が出ると、その死体を食って太る銀行や投資銀行、年金基金、リスク基金など資本市場のハイエナたちがいる。サブプライム市場が崩壊したので、新たな釣り場を探していた投機家にとって、食糧先物は金の卵を産む鶏なのだ。