ニッケイ新聞 2008年7月30日付け
中央銀行は二十八日、多国籍企業の配当送金が倍増したことで今年上半期の国際収支は、百七十四億ドルの赤字と発表したことを二十九日付けエスタード紙が報じた。期間収支の赤字としては、一九四七年以来の最高である。ルーラ大統領が二〇〇三年に政権獲得以来、上半期としては初めての国際収支赤字でもある。
ブラジル経済は今年上半期、一九四七年以来最高という国際収支赤字の苦杯をなめた。国際収支は、経常収支と資本収支の総額。経常収支の内訳は、貿易収支や貿易外収支、移転収支など。
これらの勘定で大量の資金が、ブラジルから海外へ去って行ったということ。多くは多国籍企業が一月から六月、本国へ九三・六%増の百九十億ドルを配当送金したためである。これだけで二〇〇七年の一年分だ。一体、多国籍企業の間で何が起きているのか。
他に懸念すべきは貿易黒字縮小で、産業が萎縮している。今年上半期の貿易黒字は、百十三億四千万ドル。昨年同期比四四・八%減である。ドル安と国内市場の消費過熱が影響したようだ。
国際収支赤字に拍車を掛けたのが、国民の海外旅行。赤字は昨年同期比一四八・五%増の二十六億三千万ドルである。明らかに対外収支の悪化だ。中銀は外資流入が順調で、国際収支の赤字は決済可能であるという。まさに花見酒だ。
金が動くだけで実りがない。理想をいうなら国際収支の赤字は、国内総生産(GDP)の関係で見るべきで、外資の流入ではない。六月時点で過去十二カ月のGDPで見れば、一・三二%。一九九九年八月の四・八二%よりはマシである。
最悪と比較して、まだマシといい続ける。怠け者は自分より怠け者がいるから、怠け者ではないという。ブラジルより悪いインドやコロンビアと比較して、努力を怠り続ける。こんな財政政策が持ち堪えるのは、二〇〇九年まで。二〇一〇年にツケを払わされる。
ブラジル産業は、ルーラ政権に入って製造業の空洞化と国際的な作為を認識した。昨年上半期に百十五億ドルの黒字を計上した二次産品が今年上半期は十億ドルの赤字。理由は何でもいえるが、好転する保障は皆無だ。
基本金利の〇・七五%引き上げはレアル通貨の高騰を意味し、産業界はさらに国際競争力を殺がれる。一年間に貿易収支が百二十五億ドルも悪化するのは、産業界にとって殴りこみも同様だ。