ニッケイ新聞 2008年7月31日付け
農産物相場は、常識で予測するのが難しくなった。従来の需給法則に異常気象と先物投機という要因が加わったからだ。農産物価格の上下幅は従来、二〇%であったが、五〇%に上った。
農産物相場の新しい動向は、ファンドの動きで左右されるようになった。大豆だけで世界には二十二回の収穫がある。そのうち八回は、ファンドの稼ぎ場だ。
シカゴ穀物先物市場は二〇〇七年、百十六億トンのトウモロコシと大豆を取引きした。しかし、実際は十億トンが、取引きされたに過ぎない。
FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を引き下げたため、投機資金は定期預金とサブプライムから一斉に穀物先物投機へ走った。
ファンドは、市場を形成しない。金が集まる所へ集まり、市場価格を操るだけ。市場を形成するのは、農産組合や輸出業者、物流会社など生産と流通に関係するヘッジ・ファンドである。
未曾有の大豆在庫を抱えた昨年八月、一俵当たり十七ドルであったのに、今年四月は三十五ドルに暴騰。需給とは関係なく、投機資金がコモディティ・ブームをまき起こしたのだ。
大口投機家が大量の資金をつぎ込んで罠をしかけ、多くの人がまんまと引っかかった。生産者にとって高騰は、よいこと。資本家も利益を得る。取引所も大金が動くので大喜び。気の毒なのは、なけなしの資金で投機を行った人と飢餓線上にある貧乏人だ。
農産物価格の高騰は、ブラジルに大きな影響をもたらした。サンパウロ市証券取引所は二〇〇五年、百二十五億ドルの取引きがあった。それが二〇〇七年は、二百四十三億ドルへと倍増。二〇〇八年は四百五十億ドルに達する見込みである。
ブラジルの証券市場に動く資金の一七%は、外資である。この外資は証券市場に飽き足らず、農地購入や肥料倉庫、穀物倉庫、物流機構に手を出し始めた。無数の中国や米国、フランス、オランダ、英国のファンドが、ブラジルの農地買占めに奔走している。