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繁栄の夢はかなわぬ現実=ピアウイのヒマ栽培農家=10年計画が3年目で挫折

ニッケイ新聞 2008年8月5日付け

 ルーラ政権の燃料計画中、地域活性化と騒がれたヒマ(マモーナ)によるバイオ・ディーゼル生産計画が挫折し、多くの農家が先の見えない生活を余儀なくされている。
 三日エスタード紙が報じたのは、ヒマによるバイオ・ディーゼル生産が導入されたピアウイ州南部のカント・ブリチーからエリゼル・マルチンスにかけての地域。
 一九耕地に六六五家族が入植して始められたサンタクラーラ計画は導入から三年が経過したが、七月二十五日本紙三面既報のように、ヒマ製のバイオ・ディーゼルは粘性が高く、エンジンを傷める可能性がある。このため、純ヒマ製のバイオ・ディーゼル生産を政府が断念と七月二十九日伯字紙が報じている。
 これにより繁栄の夢の終焉を迎えたのは、三年前に、一〇年後の割り当て地獲得という条件と引換えに、ヒマとフェイジョンの栽培契約を結んだ農家。各農家の割り当て地は八・五ヘクタールで、五ヘクタールにはヒマ、二・五ヘクタールにはファイジョンの耕作が義務付けられ、自由耕作地は一ヘクタールのみ。
 ところが、二〇〇五年こそヘクタール当たり二トンの収穫を得た農家も出たひまは、一八〇〇トン、一二〇〇トン、六四三トンと、年毎に減収。最初の作付けで芋虫の害が出た今年は、作付けのし直しも出来ず、収量ゼロの農家も多いという。
 この状況に、契約に反し別の作物を植え始めた農家もあるが、入植農家生き残りの可能性は契約先の伯エコディーゼルのサジ加減次第。収量の三割を受け取る契約の同社は、前倒しの形で月々一六四レアルを支払った上、基礎食料品セットも配っているが、既に四〇軒の農家が見切りをつけて入植地を出たという。
 この地域のヒマの急激な減収には、土地改良の不足や種の品質低下、雨不足などの諸要因が重なっているが、元来の栽培種ではなかったヒマの栽培など、計画そのものへの疑問もある。
 伯エコディーゼル側も「将来は大豆でバイオ・ディーゼル生産」という中、契約通りにヒマ栽培を続ける農家。割り当て地獲得の希望だけが農家を留めているが、日雇い仕事を見つけて細々と食いつないでいる農家にはどんな明日が来るのだろうか。また、大統領自らが旗を振り、研究不足のまま始められた計画の責任は、誰が取るというのだろう。