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ルーラ大統領=伯亜共同歩調が切り札=ドーハは誰のため=先ずメルコスルの根回し=オンブにダッコの亜国

ニッケイ新聞 2008年8月6日付け

 ドーハ・ラウンド(多国間交渉)が決裂したことでルーラ大統領は四日、ブエノス・アイレスにキルチネル大統領を訪ね、伯亜共同歩調の必要性を訴えたと五日付けエスタード紙が報じた。大統領はメルコスルの市場開放をドーハ・ラウンドへの切り札にしたいらしい。亜大統領は交換条件として、均衡貿易を要求した。
 「伯亜両国は、神が隣国にしてくれたのだ。両国は、夫婦のように共同歩調を採らねばならない。それなのに何故、お互い脇見をしていたのか」と大統領が両国の財界人一千人を前に語って爆笑をさそった。
 脇見とは、欧米との二国間交渉のことらしい。ドーハ・ラウンドでは両国が、多国間協定に対し相反する立場を採ったことで、メルコスルという足場の強化を再認識したようだ。両国は通商システムばかり話し合い、政府と財界の会話が欠如していたという。
 亜大統領は最近、国民の支持率が激減し、経済の失政さえ噂されているが、ブラジルは現亜政権に賭けている。ルーラ政権は就任以来、亜国へ八十億ドルをつぎ込んだ。
 亜国はブラジルより豊かな経験を持ちながら、不運であったと大統領がいう。亜国は貿易赤字を訴えて数々の譲歩を得たが、国力は益々追い抜かれるばかりだ。
 ブラジルは数々の恩典を提供したが、貿易不均衡は改善できない。亜側の貿易赤字を是正するため大量の小麦買い付け商談が浮上。しかし、亜国の優柔不断はブラジルの比ではない。亜国はインフレ抑止のため国内市場を優先し、小麦の輸出制限を決めたばかり。
 ブラジルには亜国産小麦がなければ、もっと安い米加産小麦がある。小麦の輸出制限を破るため、亜国は関税の引き上げを行った。小麦粉なら一〇%を一八%に。粒状の小麦なら二八%。亜国は一事が万事、こんな調子だから疲れる。
 ドーハ・ラウンドてこ入れのため大統領は亜国へ飛んだが、両国は簡単に歯車がかみ合わない。ブラジルは、メルコスルの市場開放へ向けて根回しを始めた。ドーハ・ラウンドの決裂で苦しむのは伯亜ではなく、さらに貧しい国々だ。伯亜の共同歩調がドーハの前提条件だと大統領はいう。
 これからの世界情勢は、貧しい国の国民が職と食を先進国に求めるようになる。先進国は情け容赦なく、この難民を追放する。ドーハ・ラウンドは極貧国のために必要なのであって、ブラジルだけのためではない。それにはメルコスルの市場開放を条件に、ドーハ・ラウンドを成功させることだと大統領は考える。