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「忘れないで平和の尊さ」=63回目の原爆の日=復興の象徴イチョウの植樹も

ニッケイ新聞 2008年8月7日付け

 広島に世界で初めての原子爆弾が投下されてからちょうど六十三年目となる六日、恒例の原爆忌が広島・長崎両県人会、在ブラジル原爆被爆者協会の共催で営まれた。
 午前八時からサウーデ区にある本派本願寺南米教団ブラジル別院(西本願寺、松峯慈晄総長)であった法要には、関係者二十六人が参加、原爆投下時刻の八時十五分に鐘が鳴らされた。出席者らは起立して黙祷、それぞれの平和への思いを胸に焼香をあげた。
 読経後、松峯総長は、「犠牲となった命のうえに生かされていることを忘れずに生きてゆかなくては」と法話。
 被爆者協会の森田隆会長はあいさつのなかで、同協会の会員である被爆者が前日五日に亡くなったことを報告、「先に亡くなった被爆者の意志を継ぎ、平和の尊さを訴え続けましょう」と呼びかけた。
 続いて、会場をイビエプエラ公園内にある「UMAPAZ」(環境と平和を考える市民大学)に移し、平和式典が行なわれた。
 今年初めての試みとして、エイトール幼稚園の生徒約三十人を対象に折り鶴講座が行われ、来賓として出席した森口イナシオ援協会長らも一緒に子供たちの手を取り、折り方を教えていた。
 平和講演では、森田会長をはじめ、広島県人会の大西博巳会長、エドアルド・ソブリーニョサンパウロ市環境局長、羽藤ジョージ、野村アウレリオ両サンパウロ市議らが、約八十人の前で平和や核爆弾について各五分ずつ講演、平和の尊さを訴えた。同幼稚園の吉田ケンゾウ君(5)から平和記念プレートが大西会長に手渡され、来場者からは拍手が起きた。
 UMAPAZの中庭と入り口に、関係者や幼稚園の生徒たちによって、
広島県人会の平崎靖之さんが寄贈したイチョウの苗木が一本ずつ植えられた。イチョウは生命力が強く、被爆後に芽吹いたことから復興の象徴とされている。
 今年は幼稚園児への平和学習など、新しい試みもあった同式典だが、年々亡くなってゆく被爆者や式典への参加者が減少している現状に、多くの参加者から「寂しい」との声が聞かれた。