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M・ダ・ペーニャ法から2年=救済や情報求める電話倍増=社会的な意識改革の遅れも

ニッケイ新聞 2008年8月9日付け

 家庭内暴力の被害者は女性か子どもが多いが、家庭での女性への暴行加害者厳罰化などを扱ったマリア・ダ・ペーニャ法施行から二年が過ぎた。
 夫から二度も殺されかけ、現在も車椅子生活のマリア・ダ・ペーニャさん事件をきっかけに生まれ、加害者の刑期を最高三年に延長した他、被害防止対策など、種々の規制を定めた同法は、七月の調査では国民の六八%に知られ、八三%から肯定的評価を受けていると、七日フォーリャ紙。
 八日伯字紙には、同法施行二周年となる七日に発表された、女性の救済や情報提供のための電話(180)の利用状況も報じられたが、180への通話は急増中で、今年上半期は一二万一四二四件に対応。昨年同期の一〇七・九%増。うち、九・八%の九五六三件は何らかの形の暴行を訴える通話で、連日暴行は六一・五%、毎週が一七・八%。被害者は黒人が三七・六%、二十~四十歳が五二・六%、学歴は中学までの女性が三二・八%という数字もある一方、夫が加害者は六三・九%。加害者に飲酒や麻薬使用の問題ありも五八・四%となっている。
 この180利用者急増は、M・ダ・ペーニャ法が知られてきたこととも関連すると思われるが、知名度には、北部と中西部八三%、南部七九%、東北部七七%、南西部五五%のように地域差がある。また、女性が暴行された時、180などで支援や援助を求めると思うかという問いには、求めないが四二%。A、Bクラスでは四七%が求めないと答えたが、D、Eクラスでは三五%と、社会的階級差があった。
 これらの数字からは、低学歴で安定した職のない人が酒や麻薬に手を染め、結果的に暴行事件多発といった光景も浮かぶが、家庭内暴力の大半は酒のせいで、女性保護的な法は違憲とした上、「暴行されたくないなら、怠け者で酒飲みの男を選ばなければよい」と発言した判事もいる。
 これに対し、女性問題を特別に扱うための判事育成や女性救済施設増設を手がける現場からは、見識のなさを嘆く声。妻を虐待する夫を演じ、暴漢に襲われた俳優は、先の判事の発言は男性至上主義と批判したという。
 国民の意識向上を知らず、法の適用も拒む判事もいる中、国民からの声の高まりによる法の浸透化と適用、真の男女平等の定着が望まれている。