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『消えつつあるアマゾンの森』=南研子さん 知る会で講演=インディオ・自然から学ぶ

ニッケイ新聞 2008年8月12日付け

 「今をしっかり生きて」―。NGO熱帯森林保護団体(RFJ)代表の南研子さんが四日、ブラジルを知る会(清水裕美代表)に招かれ、「消えつつあるアマゾンの森―現場からの報告」をテーマに講演した。今回二十二回目となるアマゾン訪問で撮影した約四十枚の写真を映しながら、アマゾンの自然やインディオの世界観を約二時間、熱弁。約二十人が耳を傾けた。
 「二年前にあった森が大豆畑に変わり、広大な森が燃やされ、動物の死体が転がっている」
 南さんは毎年一カ月、共に過ごすカヤポ族の住むシングーの森の往復四千キロを常に陸路で移動する。その度に自然と人との衝突が残す悲惨な変化を目の当たりにしてきた。
 「現代が豊かな生活を求める分、インディオや野生動物が犠牲になっている」と現代社会が自然にもたらす影響を強調、〃共生〃の可能性を模索する一人一人の意識変革を訴える。
 日本で起きている悲惨な事件などを踏まえながら、「インディオの社会にはいじめや差別、痴呆や寝たきり、子供の親殺しなど存在しない。豊かさを求めるあまり、迷いの中にある」と病む現代社会を批判、大きくうなずく来場者の姿も。
 一人一人の存在を大事にし、今に感謝して生きるカヤポ族の生活スタイルを挙げ、「未来を考えて不安になるより、今をしっかり生きることが大切」と語る。
 現在アマゾンでダム建設プロジェクトが進められているという。そんな状況に怒りを覚えながらも、「自分ひとりじゃちっぽけ。でもできることってある」とあくまで肩の力を抜いたスタンスの南さん。
 「蟻だって何千も何万も集まればマンモスに立ち向かえる。みんなで蟻になりましょう」との呼びかけに、来場者は表情を引き締めた。
 講演後は、南さんを囲んで懇親昼食会が開かれた。参加した女性らは、口々に「南さんからパワーをもらった」と話していた。
【みなみ・けんこ】
 英歌手スティングが八九年「アマゾンを守ろう」世界ツアーで来日、同プロジェクトに関わったのがきっかけでRFJを設立。マット・グロッソ州とパラー州にかかるシングー先住民国立公園で熱帯林や野生種保護、先住民の医療・教育、植林活動。日本では啓蒙活動などで活躍。著書「アマゾン、インディオからの伝言」「アマゾン、森の聖霊からの声」(ほんの木出版社)。RFJのホームページは(http://www.rainforestjp.com/)