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マイコバクテリアの脅威=5年間で2千人以上感染=治らぬ傷あと、長期の薬

ニッケイ新聞 2008年8月14日付け

 国家衛生監督庁(ANVISA)が八日に「ブラジルは(マイコバクテリア感染症)流行の危機に直面」と警告したことや、その後解明の事実などを九、十二、十三日伯字紙が報じている。
 九日伯字紙によると、二〇〇三年以降、一四州で二一〇二人の患者が発生したのは、抗酸性の高いマイコバクテリアと呼ばれる種類の菌による感染症。〇三年のサンパウロ州の四三人に始まり、翌年からはリオ州、パラー州などでも発生。今年も既に七六人の被害を確認し、調査中患者は一五六人。感染は、カメラ利用の腹腔内手術を中心に、骨盤手術や整形外科、形成外科手術でも起きている。
 実際には、この警告はもっと早く出されているべきもので、五日にエスピリト・サント州で脂肪吸引または注入による形成手術を禁じたことを七日伯字紙が報じた他、六月二十九日エスタード紙にも、マイコバクテリアで七六人の感染確認などが報じられていた。
 十三日フォーリャ紙によれば、ANVISAでは、被害を引起こしている菌が抗酸性で、通常の殺菌処理では死なないことなどを〇七年には知っていたというが、実際の警告は八日。十三日エスタード紙も、五年も経ってやっと、ANVISAが手術用器具による感染症派生の危険性を減ずるための基準造りの検討をすることを決めたの報。
 感染症を起こした菌は二~三種で、殺菌液に十時間浸けておいても死なない種もある。殺菌液の有効性への疑問もあり、一部専門家は同殺菌薬の使用停止処置を求めている。また、十二日伯字紙は、ポリ乳酸を基礎とした製品の皮下注入手術後の発症例も報告されており、メスを入れたりしない手術での感染に戸惑いの声もあるという。
 このため、ANVISAでは、手術用器具の殺菌不足の可能性と、菌の抗酸性度が高く、通常の殺菌法では効かなかった可能性の二点を挙げ、別の殺菌薬使用を勧めるとともに、カニューレの交換などを求めている。
 感染症で組織が壊れ、膿や痛みに苦しむ人、傷がふさがらず再手術を受ける人、特殊な抗生物質の長期服用で肝臓や胃を壊す人、死亡例まであるが、六月二十九日エスタード紙は、感染症の可能性を完全に除くことの難しさとともに、患者からの訴訟や社会的制裁を恐れ感染症発症の事実を隠す病院もあると指摘。ANVISAの判断の遅れなど、疑問や責任追及の声は強まりそうだ。

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