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拷問死、永久不問に=法相譲歩、軍部矛を納める

ニッケイ新聞 2008年8月15日付け

 軍政時代の拷問執行者への特赦法適用の解釈を巡ってジェンロ法相と軍部が見解を異にしていたが、ルーラ大統領の「もっと未来へ目を向けよう」という鶴の一声で、法相も譲歩。ジョビン国防相や三軍の長も一件落着とし、矛を納めたことを十三日付けエスタード紙が報じた。
 軍政時代の政治弾圧によって拷問死した犠牲者の遺族には、心の傷として溜飲し難いことだが、同件は永遠に葬られたらしい。大統領は「民主政治を守るため死んだ人は、英雄であって犠牲者ではない」という。
 国防相は軍人昇進式で法相と軍部宛にメモを送った。法相宛には「国防相の役目は国防強化であり、拷問執行者の特赦には関心がない」と。軍部宛には、偉大な軍人などいないから自分史など書くなと諌めた。
 一方、サンパウロ州高等裁判所第一民事法廷のリベイロ裁判長は十二日、拷問執行責任者として控訴中のウストラ大佐の抗弁を棄却。第三判事が検討の余地ありとしたため、判決は先送りされた。
 同大佐は他にも、連行と殴打致死の訴えがある。新聞記者メルリーノ氏(二三)は、労働共産党(POC)の党員であった。家族と食事中突然、逮捕状もなく連行された。後日遺体の引渡しで、撲殺と知った。
 軍政で死に至った学生や労働者を、英雄として祀ってやらないと霊魂が浮かばれないので、拷問死問題は決して解決しないと、大統領が述べた。ブラジルでは、政治改革の犠牲となった人の血を評価する習慣がない。英雄とされたのは、チラデンテスだけという。

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